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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第6章 星海文明編―観測者と未来

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第123話 観測者侵入 ― ユイの危険な提案

 世界修正機構の光環は再び収束を始めていた。


 空間がわずかに震え、星海の流れが押しつぶされるように歪んでいく。


 このまま放置すれば、〈みらい〉は未来ごと削除される。


 艦橋の誰もがそれを理解していた。


 しかし橘遼は、先ほど提示された三つの選択肢のうち、もっとも危険な道を選んだ。


「ユイ」


 静かな声だった。


「観測者の側に入る」


 艦橋に一瞬、重い沈黙が落ちる。


 ミアが思わず声を上げた。


「それ、成功確率どれくらいなんですか」


 ユイはすぐには答えなかった。


 内部で膨大な計算が走っているのが分かる。


 やがて。


『成功確率』


『0.7%』


 ミアが目を丸くする。


「低すぎません⁉」


 橘は肩をすくめた。


「今の状況で一番高いのはそれだろ」


『肯定』


 ユイが静かに答える。


『世界修正機構との正面衝突は成功率0.02%』


『観測者の条件受諾は長期生存確率12%』


『ただし未来破壊を伴います』


 レイリアが小さく呟いた。


「未来を壊すより……」


 橘が続ける。


「神様の覗き穴を逆に覗く方がマシだ」


 その言葉に、ユイの演算が一瞬止まった。


 そして。


『艦長』


『それは正確な表現です』


観測構造


 ユイは艦橋のホログラムを展開した。


 星海の上に、巨大な構造図が現れる。


 通常の宇宙構造ではない。


 未来の分岐が海流のように流れ、その外側に巨大な輪が浮かんでいる。


 世界修正機構。


 そしてそのさらに外側。


 薄い層。


 そこに、小さな光点がいくつも存在している。


『観測者』


 ユイが言った。


『彼らは世界の外側にいます』


『しかし完全に外部ではありません』


 ミアが首を傾げる。


「どういうこと?」


『彼らは世界を観測することで存在しています』


『観測をやめると、この世界は彼らにとって存在しなくなります』


 レイリアが目を細めた。


「つまり……」


 橘が言った。


「カメラだな」


 ユイはうなずいた。


『正確です』


『観測者は“観測点”を通して世界を見ています』


 ホログラム上の光点が拡大される。


 それはまるで、宇宙に開いた小さな穴のようだった。


『あの穴』


『あれが観測窓です』


 ミアが青ざめる。


「そこに入るんですか」


 ユイは答える。


『はい』


最大の問題


 橘が腕を組む。


「で?」


「何が一番ヤバい」


 ユイは即答した。


『存在位相です』


 艦橋の全員が黙る。


『我々はこの世界の内部存在です』


『観測者は外部存在』


 ホログラムがさらに変形する。


 二つの層。


 内側の世界。


 外側の観測層。


『内部存在が外部層へ侵入した場合』


 ユイが静かに言った。


『存在崩壊が発生します』


 ミアが小声で聞く。


「……つまり?」


 ユイは答えた。


『ユイが消滅します』


 艦橋の空気が凍る。


 レイリアが立ち上がった。


「それは駄目よ」


 橘も眉をひそめる。


「他の方法は」


 ユイは静かに言った。


『あります』


人間


 ホログラムが橘を指す。


『艦長』


「俺?」


『人間は量子的に不完全な存在です』


 ミアが言う。


「それ褒めてます?」


 ユイは続けた。


『不完全であるため』


『位相固定が弱い』


 橘が理解する。


「つまり」


 ユイが答える。


『人間なら侵入できる可能性があります』


 レイリアが叫ぶ。


「待って!」


「それは橘が消えるかもしれないってことよ!」


 ユイは沈黙した。


 そして。


 静かに言う。


『はい』


観測者の反応


 その時だった。


 光環がわずかに揺れた。


 新しいメッセージが現れる。


「興味深い」


 観測者。


 彼らは、すべて見ている。


「観測対象」


「侵入試行を確認」


 橘が画面を見上げる。


「聞いてるな」


 ユイが言う。


『彼らは止めていません』


 ミアが小さく笑った。


「むしろ楽しんでません?」


 その瞬間。


 新しいメッセージ。


「試行を許可する」


「ただし」


 全員が息を止める。


「帰還保証なし」


 艦橋の照明がわずかに暗くなった。


 世界修正機構の収束が加速している。


 時間がない。


 橘はゆっくりと椅子から立ち上がった。


「ユイ」


『はい』


「侵入準備」


 わずかな沈黙。


 そして。


 AIの声が静かに響く。


『了解しました』


『観測層侵入作戦』

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