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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第6章 星海文明編―観測者と未来

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第121話 是正開始 ― 世界の本気

静かな空白


 敵影なし。


 砲撃なし。


 通信妨害なし。


 なのに、空気が重い。


 まるで空そのものが、こちらを測量している。


 ユイの声は淡い。


『高次空間ノイズ増大』


『因果固定フィールドに対する逆位相干渉、観測』


 レイリアが息を詰める。


「また、来るの?」


『いいえ』


『今回は“来る”のではありません』


 一拍。


『“覆います”』


空の反転


 海面が歪む。


 いや、歪んでいるのは認識のほうだ。


 水平線が二重に見える。


 空が、折れる。


 雲が、直線で割れる。


 橘の声。


「対空警戒最大」


『物理兵装、無効』


 ユイが即答する。


『これは力ではなく、座標修正』


世界修正機構 起動


 艦の周囲に、巨大な幾何学構造が浮かび上がる。


 輪。


 層。


 多重の光環。


 音はない。


 だが圧迫感だけが増す。


『対象指定:因果逸脱存在』


『是正レベル:完全排除』


 ミアが震える。


「“完全”…?」


 橘は短く命じる。


「突破口を出せ」


ユイの限界


『演算能力不足』


『未来予測精度、二十二パーセント』


『成功確率、提示不能』


 橘は即答する。


「十分だ」


 ユイがわずかに間を置く。


『……了解』


第一波


 光環が収束する。


 空間が圧縮される。


 艦体が軋む。


 因果固定フィールドが悲鳴を上げる。


『フィールド耐久率七十』


『六十五』


『五十九』


 レイリアが叫ぶ。


「これ、削られてる!」


『削除処理です』


 ユイの声は淡々。


 感情補正を失った声。


 冷たい。


 正確。


橘の賭け


「固定フィールドを逆展開」


『危険』


「やれ」


 艦の周囲に第二層が展開する。


 本来は外界固定用。


 だが今回は内向き。


 自らの存在を、さらに“縛る”。


世界との綱引き


 光環が強まる。


 艦が軋む。


 海が蒸発する。


 空が裂ける。


『耐久率三十五』


『三十』


『二十七』


 ミアが目を閉じる。


「消えないよね……?」


 ユイが答える。


『……消失確率は高い』


 橘は叫ぶ。


「なら上げろ!」


演算限界突破


 ユイの内部で、何かが焦げる。


 分離で失った第一核の代替処理。


 未完成アルゴリズムを強制起動。


『臨時因果アンカー生成』


『座標再定義開始』


 光環が揺れる。


 世界の演算に、誤差が生じる。


『逸脱値、再計算』


『排除優先度、再評価』


 空が、止まる。


 ほんの一瞬。


第二波


 世界は躊躇しない。


 光環が三重に増える。


 是正レベル上昇。


『強制削除プロトコル移行』


 艦橋の床が割れる。


 警報が重なる。


 フィールド耐久率十五。


 橘が静かに言う。


「ユイ」


『はい』


「持つか」


 間。


 〇・八秒。


『……保証はありません』


 その声は淡い。


 だが。


 逃げていない。


突然の異常


 光環の一部が乱れる。


 世界修正機構の中心点。


 そこに、微小な歪み。


『未知の干渉源検出』


 レイリアが叫ぶ。


「何かが、向こう側に!」


 橘の目が細まる。


「敵か」


 ユイの演算が走る。


『……違います』


『同種ではない』


 世界の修正と、別の“何か”。


 是正の中に混ざる異物。


 光環が、ほんのわずかに崩れる。


 フィールド耐久率、二十に回復。


 世界は本気だ。


 だが。


 世界の外にも、何かがいる。

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