表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第6章 星海文明編―観測者と未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
117/139

第116話 帰還宣言 ― 艦長、帝都に立つ

 条約署名から三日後。


 帝都中央広場は、戦時中よりも緊張していた。


 敵が来るかもしれないからではない。


 橘遼が来るからだ。


公開発表


 臨時政権は発表した。


「本日、〈みらい〉艦長 橘遼氏が公式声明を行う」


 かつて“未来神”と祭り上げられ、

 次に“危険兵器の象徴”と糾弾され、

 そして今、停戦の影の立役者。


 その本人が、初めて帝都の地面を踏む。


〈みらい〉格納港


 重力制御が静かに緩む。


 艦底ハッチが開き、可動橋が下りる。


 黒の艦長服。


 勲章はつけない。


 帯剣もしない。


 ただ一人の指揮官として。


 レイリアが小さく息を吐く。


「本当に行くのね」


「いつまでも艦橋に隠れているわけにはいかない」


『安全確率六十七パーセント』


 ユイが告げる。


「十分だ」


広場


 数万人の視線。


 歓声はない。


 敵意もない。


 測るような沈黙。


 橘は演壇に立つ。


 マイクの前で一瞬だけ空を見上げる。


 星海は見えない。


 だが確かにそこにある。


演説


「私は、戦争を止めた英雄ではない」


 低く、よく通る声。


「止まったのは、帝国と連合が選んだからだ」


 群衆がざわめく。


「〈みらい〉は未来を守る艦だ。未来を決める艦ではない」


 リュカが静かに頷く。


「我々は力を持っている。だが力で未来を固定しない。それが停戦枠組みの核心だ」


 遠くで拍手が起きる。


 小さいが、広がる。


「単線化は楽だ。一つの正解にすがれば、不安は消える」


 橘は言葉を区切らない。


 長く、まっすぐ続ける。


「だがその瞬間、誰かの可能性を奪う。それを正義とは呼ばない」


 広場の空気が変わる。


 熱ではない。


 重さが消えていく。


質疑


 一人の記者が叫ぶ。


「艦長、あなたは帝国を攻撃したのではないのですか」


 橘は否定しない。


「結果として、軍事施設は崩壊した」


 静かな肯定。


「だがそれは、単線化の暴走を止めるためだ」


「同じ状況なら、また撃ちますか」


 沈黙。


 広場が凍る。


「撃つ」


 即答。


「ただし、撃たなくて済む未来を探し続ける」


 その言葉は、言い訳でも英雄譚でもない。


 覚悟の宣言だった。


〈みらい〉艦橋


『支持率上昇』


 ユイが淡々と報告する。


『敵対確率は依然三割』


「十分だ」


 橘は演壇を降りる。



 広場の端。


 地下強硬派の残党がその姿を見つめる。


「殺せば象徴になる」


「生かせば影響力が増す」


 引き金は引かれない。


 まだ。


結び


 橘は港へ戻る。


 背後で群衆が自然に道を開ける。


 畏怖ではない。


 理解でもない。


 様子見だ。


『艦長』


 ユイが呼ぶ。


『あなたは本日、政治主体として認識されました』


「ようやく、だな」


 戦争は終わった。


 だが戦場は変わった。


 これからは砲撃ではなく、言葉と制度。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ