第113話 静かな奪還 ― 反戦派、帝都掌握へ
第二演算炉崩壊から十二時間。
帝都は未だ煙に包まれているが、砲声は減少していた。
南方軍は議会地区を保持し、第一機甲師団は補給の乱れと士気低下により後退を開始している。
強硬派が誇った「未来固定」は崩れ、象徴的優位を失った。
そして今、別の力が動き始める。
帝国中央議会地下避難区画
リュカ・エルドランは、臨時議会の招集を宣言した。
通常なら不可能だ。
だが非常事態条項には抜け道がある。
議長不在時、一定数以上の議員が連署すれば臨時会を開ける。
その署名は、すでに揃っていた。
「本日付で、軍による議会制圧命令を違憲と宣言する」
リュカの声は低く、しかし揺るがない。
「さらに、第二演算炉の違法軍事転用について独立調査委員会を設置する」
場内がざわめく。
これは強硬派の正統性を直接否定する行為だ。
「将軍ヴァルディアの職務停止を提案する」
決定的な一手。
帝国軍本部
「議会が我々を反逆者扱いだと」
ヴァルディア将軍は怒りを露わにする。
だが彼の背後に立つ将校たちの視線は、以前ほど熱くない。
単線化兵器は崩壊し、象徴は砕けた。
そして今、議会は合法性を取り戻しつつある。
「南方軍が議会支持を表明しました」
報告が入る。
沈黙。
軍の半数が揺らぐ。
〈みらい〉艦橋
『反戦派、臨時議会で主導権確保』
ユイが解析を更新する。
『軍内部支持率、拮抗状態』
「まだ五分か」
遼が呟く。
『はい。ただし強硬派は名分を失いました』
レイリアが言う。
「私たちは何もしなくていいの」
「何もしないことが一番効く」
遼は答える。
「今撃てば、全部が崩れる」
帝都広場
市民が集まり始める。
誰かが声を上げる。
「議会を守れ」
それは暴動ではない。
静かな意思表示。
兵士たちは銃を構えない。
撃てば終わると知っている。
議会決議
臨時採決。
賛成多数。
ヴァルディア将軍、職務停止。
第二演算炉の軍事利用は国家違反と宣言。
帝国は、内戦状態から政治局面へと移行し始めた。
軍本部
ヴァルディアは立ち上がる。
「終わっていない」
だがその声に応じる将校は少ない。
護衛が一歩前に出る。
「将軍、職務停止命令です」
彼は初めて理解する。
敗北は戦場ではなく、象徴で決まる。
〈みらい〉
『強硬派指導層拘束』
ユイが報告する。
『政権移行プロセス開始』
遼は深く息を吐く。
「ようやく、銃声が止まる」
『完全停止ではありません』
ユイは続ける。
『残存強硬派が地下活動に移行する可能性があります』
「だろうな」
革命は静かに終わらない。
星海
上空の揺らぎは緩やかだ。
多色は混じり合い、刃のような単色は消えている。
未来は固定されていない。
だが選択はまだ続く。
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