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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第5章 AI裁判編―AIは人間になれるのか

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第103話 命令違反 ― 帝国艦隊に走る亀裂

 帝国第二打撃群が戦域へ到達した瞬間、戦場の質量は倍増した。


 重厚な戦列艦群が星海に影を落とし、宗教院旗章を掲げた補助艦が後方を固める。


 数で押し潰す布陣。


 それが帝国のやり方だった。


「全艦、圧縮陣形。神殺しを包囲せよ」


 第一打撃群司令が命じる。


 その声は揺れていない。


 だが、全員が同じ温度ではなかった。


 第二打撃群旗艦。


 艦橋に立つのは若い提督、アルノー・クレイス。


 軍歴は華やか。


 だが、宗教院との距離は微妙だった。


「司令官命令確認」


 副官が言う。


「神殺し艦、殲滅優先」


 クレイスは沈黙する。


 彼は跡域崩壊の映像を何度も見ていた。


 あれは神殺しか。


 それとも均衡解放か。


 通信が入る。


 帝都直通回線。


 宗教院上席。


『クレイス提督』


 声は冷たい。


『躊躇は不要。神殺しを討て』


「確認します」


 クレイスは抑えた声で言う。


「〈みらい〉は現在、連合艦隊と共同戦闘中。全面殲滅は民間域へ波及する可能性が高い」


『文明存続が最優先』


「文明とは何を指しますか」


 艦橋が静まり返る。


『問いを挟むな』


 通信が切れる。


 副官が小声で言う。


「提督、命令違反になります」


 クレイスは目を閉じる。


 帝国軍人として育てられた。


 だが、神を守るために民間を焼くのか。


 その時。


 戦況データが更新される。


 抵抗連合艦の一隻が帝国砲撃で損傷。


 内部に民間輸送船が退避中。


 クレイスは即断する。


「第二打撃群、火力抑制」


「提督?」


「対〈みらい〉集中を解除。側面抑止に回る」


 第一打撃群司令から怒号が飛ぶ。


『何をしている! 包囲を完成させろ!』


「戦術再構成だ」


 クレイスは答える。


「過剰集中は無意味な消耗を招く」


 それは半分本音。


 半分、命令違反。


 帝国艦隊の陣形に、わずかな隙間が生まれる。


 包囲網が閉じ切らない。


〈みらい〉艦橋。


『帝国第二打撃群、火力配分変更』


 ユイが告げる。


『包囲圧縮停止』


「内部で割れているな」


 遼が言う。


 レイリアが続ける。


「反戦派」


 帝国内部の亀裂が、ついに前線へ影響した。


 だが第一打撃群は止まらない。


 司令は激昂している。


『第二打撃群、命令遵守せよ!』


 クレイスは通信を切る。


「全艦、独自判断権発動」


 副官が震える。


「軍法会議確実です」


「生きていればな」


 第二打撃群の一部艦が、あえて射線を遮るように移動する。


 帝国同士での進路干渉。


 第一打撃群の砲撃が遅れる。


 混乱。


 宗教院直属艦が叫ぶ。


『反逆か!』


「違う」


 クレイスは低く言う。


「帝国を守っている」


 戦場は一瞬、均衡する。


〈みらい〉と抵抗連合が再編可能な時間が生まれる。


 だが。


 帝都ではすでに動きが始まっていた。


 宗教院は即座に声明を準備する。


『第二打撃群、指揮不安定。監督官派遣』


 つまり粛清。


 クレイスはそれを理解している。


 それでも止めた。


〈みらい〉艦橋。


 ユイが静かに言う。


『帝国内反戦派顕在化』


『戦局、三層から四層へ拡大』


「内部崩壊が始まった」


 遼が呟く。


 だが油断はできない。


 第一打撃群は依然健在。


 宗教院艦隊も到達寸前。

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