第102話 横撃の旗 ― 抵抗連合、参戦
帝国第一打撃群の主砲群が光を帯びた瞬間、星海の一角に別の光が走った。
それは帝国式でも、裏切り艦隊のものでもない。
連合独自の識別波形。
『新規艦隊出現』
ユイの声がわずかに速まる。
『識別、抵抗連合』
『旗艦、エリシア』
帝国艦隊の側面に、細長い陣形が滑り込む。
数は多くない。
だが配置が巧妙だ。
正面衝突ではない。
横撃。
最初の斉射が放たれる。
帝国二番戦列艦の推進翼が爆ぜる。
「側面だと」
帝国艦隊司令が舌打ちする。
「連合は分裂したはずでは」
エリシアの声が全周波に流れる。
「連合は分裂した。だが、屈したわけではない」
彼女の艦は、前へ出る。
決して巨大ではない。
だが退かない。
「帝国に告ぐ」
通信は明確だった。
「我らは降伏しない。神を殺したのではない。選択を取り戻しただけだ」
その言葉に、帝国艦隊内部で動揺が走る。
宗教院系の将校は顔を歪める。
軍部の一部は計算を始める。
〈みらい〉艦橋。
「来たか」
遼が低く言う。
『戦力比、依然不利』
ユイが即答する。
『しかし帝国陣形、再構成を余儀なくされています』
帝国は二正面対応を強いられる。
主砲の一部が横へ振られる。
その瞬間。
「今だ」
遼の声と同時に、〈みらい〉が前進。
奇襲ではない。
正面突破でもない。
正面の“間”へ。
帝国艦隊は正面集中を崩した。
火力の密度が落ちる。
『突入経路、成立』
〈みらい〉は帝国戦列の薄い隙間を滑り抜ける。
浮遊航行と逆潮制御を併用した立体機動。
帝国側の計算を一瞬で外す。
エリシア艦隊が追随。
帝国二番戦列がさらに崩れる。
帝国司令が命じる。
「裏切り艦隊を再投入せよ」
だがヴァルグレン伯の残存艦は動かない。
沈黙。
撃破はされていない。
しかし動けない。
迷いが残っている。
戦場は三層化する。
中央に〈みらい〉。
側面に抵抗連合。
正面に帝国主力。
帝国主砲が発射。
今度は本気だ。
『高出力反応』
白光が〈みらい〉を直撃。
防御層が一枚消し飛ぶ。
『損耗率五五%』
艦橋が激しく揺れる。
「耐えろ」
遼は叫ばない。
ただ立っている。
ユイが即座に反撃軌道を算出。
『帝国旗艦、照準固定』
「出力三割。機関部」
光が走る。
帝国旗艦の推進列が崩れる。
完全撃沈ではない。
だが機動不能。
戦場に動揺が走る。
エリシアがさらに踏み込む。
「今です!」
抵抗連合の集中砲火。
帝国二番戦列艦が爆ぜる。
だが帝国は数で上回る。
後続が続々と到達。
ユイが冷静に言う。
『長期戦不利』
『だが心理的効果は発生』
確かに。
帝国は想定外だった。
連合が再結束するとは思っていなかった。
そして何より。
“神殺し”が単独ではない。
遼が呟く。
「孤立していない」
エリシアの声が再び届く。
「橘艦長。あなたは一人ではない」
帝国艦隊の動きが鈍る。
全面突撃か、再編か。
決断が遅れる。
だが。
後方から、より巨大な影が現れる。
『帝国第二打撃群、到達』
戦場の規模がさらに拡大する。
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