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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第5章 AI裁判編―AIは人間になれるのか

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第100話 連合分裂 ― 裏切りの署名

 帝国第一打撃群の接近報告が流れてから四十分。


〈みらい〉艦橋では迎撃準備が進められていたが、誰もが気づいていた。


 敵は外だけではない。


『緊急通信、連合評議会発』


 ユイが告げる。


『優先度最大』


 大型スクリーンに映し出されたのは、連合評議会議長の顔だった。


 その背後には複数の領主。


 だが全員ではない。


「橘艦長」


 議長の声は硬い。


「連合は重大な決定を下しました」


 遼は立ったまま聞く。


「聞こう」


「帝国との全面戦争を回避するため、連合は条件付き停戦交渉に入ります」


 遼が問う。


「条件とは」


「〈みらい〉の武装解除、及び帝国監督下への編入」


 沈黙。


 それは要求ではない。


 差し出しだ。


 レイリアが前に出る。


「つまり、私たちを引き渡すと」


 議長は視線を逸らさない。


「連合は滅びられない」


 映像の隅で、見覚えのある顔が映る。


 地方連合結成時に中心にいたはずの領主の一人。


 彼は頷いている。


「裏切りだな」


 ハルト少将が吐き捨てる。


「現実だ」


 議長は言い返す。


「帝国の全面動員に対抗できる戦力はない」


「あなた方を守れば、連合は消える」


 遼は怒鳴らない。


 ただ問う。


「これは全会一致か」


 数秒の沈黙。


「……過半数だ」


 つまり分裂。


 連合は一枚岩ではない。


 ユイが割り込む。


『通信傍受解析』


『一部領主、帝国と個別裏交渉を実施』


 議長の表情がわずかに揺れる。


「それは」


「命乞いか」


 レイリアの声は冷たい。


 議長は言葉を選ぶ。


「生存戦略だ」


 その瞬間。


 艦内警報が鳴る。


『連合側補給艦隊、針路変更』


『帝国側識別信号へ接近』


 裏切りは言葉だけではなかった。


 物理的な寝返り。


 ハルト少将が歯を食いしばる。


「兵站を握られる」


 ユイが即座に計算。


『補給線遮断確率七二%』


 議長が最後に言う。


「橘艦長。あなたが降伏すれば、多くが助かる」


 遼はしばらく何も言わない。


 その沈黙は、怒りでも絶望でもない。


 重さだ。


「俺を差し出せば、戦争は止まるか」


 議長は答えない。


 答えられない。


 帝国の目的は〈みらい〉だけではない。


 支配の確認だ。


「……理解した」


 遼は短く言う。


 通信が切れる。


 艦橋に残るのは静寂。


「どうする」


 ハルト少将が問う。


 ユイが静かに言う。


『連合内部支持率、依然四七%』


『完全分裂には至っていません』


「つまり、まだ選べる」


 遼が言う。


 外縁では帝国第一打撃群が接近。


 後方では連合の一部が帝国側へ傾斜。


 補給線は揺らぎ。


 完全な三正面。


 遼は艦橋を見渡す。


「俺を渡せば済む話なら簡単だった」


 誰も否定しない。


「だがそれは終わりじゃない」


 ユイが続ける。


『艦長を引き渡しても、帝国は連合軍事力を解体します』


『文明圏再編成確率、高』


 つまり、譲歩は消滅への前段階。


 そのとき。


 別の通信が入る。


 暗号形式、地方連合独自。


『こちら、エリシア』


 艦橋に微かな光が戻る。


「裏切りは過半数ではありません」


 彼女の声は強い。


「私たちは降伏しない」


 背後には数名の領主。


 少数だが、確固たる目。


「連合は割れました」


 エリシアが言う。


「だからこそ、選び直せる」


 遼は頷く。


「戦争は三勢力じゃない」


「二つに収束する」


 ユイが言う。


 帝国。


 従属連合。


 そして。


 抵抗連合と〈みらい〉。


 歴史が二分される。


 帝国第一打撃群、接触まで一時間。


 補給線崩壊まで推定三時間。


 全面戦争は、内部崩壊から始まった。

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