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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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NOCTIS – Night Archive―メンバーへの10の質問②

「では、次」


朔が進める。


「メンバーの知られざる弱点を教えてください」


三人が顔を見合わせて、沈黙が落ちる。

朔は溜め息をついて、奏を見た。


「奏、なんかないか?」


奏はギクッとして朔を見返す。


「……言っていいのか?」


「言わないと進まないだろ?」


朔の返事に奏は少しだけ躊躇しながら、口を開いた。


「朔は……ホラー映画が苦手」


朔の動きが止まった。


「あ、それ……」


凪が思い出したように呟く。

陽は慌ててきょろきょろと朔と奏を交互に見た。


朔の珍しくにっこりと笑う笑顔が怖い。

奏は気まずそうな顔をしていたが、すぐに開き直ったように腕を組んで椅子にもたれかかった。


「お前が言えって言ったんだからな」


「そうだな」


すぐに返ってくる朔の返事が怖い。

奏はじっと朔を見る。

朔の目もじっと奏を見ていた。


「まぁ……ほら、朔は作り物がダメなだけで、心霊スポットとかは平気なんでしょ?」


雰囲気を悟った凪がフォローする。

それに気づいた朔は、ようやく表情を緩めた。


「あぁ……まぁ、そうだな」


「なんで、作り物の方がダメなんだよ?」


ほっとしたのか、陽も口を開く。


「怖いと言うよりは……人を脅かそうとか、怖がらせようとしてる作り自体が苦手なんだ」


「怖いわけじゃねぇんだ?」


陽が意外そうに聞く。


「そうだな、恐怖を感じたことはないな」


「……っんだよ、じゃあ、弱点じゃねぇじゃねぇか」


奏がつまらなそうに呟く。


「俺に弱点があるとでも?」


冷たい朔の言葉に奏はうっと詰まる。


「あ、でも」


凪の一言に全員の視線が集まる。


「弱点っていうか、朔の弱いもの、猫と奏」


「「は?」」


朔と奏の声が被った。

凪はにっこり笑った。


「朔、猫見てる時、すごい優しい顔してた。あれは絶対猫に弱いでしょ?」


朔は恥ずかしそうに顔を抑える。

陽が恐る恐る手を上げる。


「あのー、猫はわかったけど……奏ってのは?」


凪は意外そうな顔で陽を見た。


「え?見ててわかんない?」


「わかんねぇよ」


凪はふふっと笑って朔と奏を見る。


「朔、奏には甘いでしょ?」


躊躇いもなく、確信したように。

朔は右手で顔を覆った。


奏は驚いて思わず朔を見た。


「……甘くねぇだろ」


ポロッと溢れた奏の言葉に、凪は続ける。


「だって……朔は奏が何しても絶対見捨てないよ?」


奏は困惑して凪を見る。


「いや、それは凪と陽にも……そうだろ」


ふふっとまた凪は笑った。


「うん、それはそうかも知れないけど、奏は特別な感じする」


「は?意味わかんねぇ」


奏が顔をしかめると、そこへ朔が制するように手を出した。


「凪……その辺でやめろ」


「え?」


きょとんとする凪。

向けられた視線の先の朔が真っ赤だ。


「おまっ、その反応はやめろっ」


奏が大声をあげる。


「悪い……」


朔が奏を手で制して、咳払いをする。

朔の顔の赤さはすぐには元に戻らなかったが、朔は流れを進めようとする。


「次だ。奏の弱点は料理」


「は?」


「料理だね」


「料理だな」


すかさず凪と陽も同意する。


「ちょっと待て」


奏が反論しようとするが、すぐに朔に鼻で笑われる。


「カレーのルーすらまともに入れられない奴が反論するな」


朔のその言葉に、奏は黙ってしまった。


「でも、知られざる弱点ではないよね?皆、知ってる」


凪が少し考えながら、呟いた。


「……まぁ、確かにノクティアも知ってんな」


陽も頷く。


「他に何かあるか?」


朔の言葉に二人は少し考え込む。


「……弱点なんか、ねぇだろ」


奏は不機嫌そうに呟く。


「甘いもの苦手なのも皆知ってるしなぁ」


「あ、わかった、な……」


言いかけた陽を奏が睨んだ。

陽の口が止まる。


「え、何?」


凪が不思議そうに陽をのぞき込む。


ちらっと奏を見て陽は肝を冷やす。

明らかに表情が変わっていた。


「いや、別に……」


「え?気になる」


「いや、勘違い……」


奏の鋭い目がじっと陽を見ている。

陽は冷や汗をかきながら、凪から目をそらす。


はぁっと朔の溜め息が聞こえた。


「……凪、気にするな。陽の思いつきだろ」


朔が止める。

それでも凪は気にした様子で頬を膨らませていた。


「じゃあ、奏の弱点、何あるの」


「もう、料理でいいだろ」


面倒くさくなったのか、朔が言い切る。


奏も諦めたように息を吐いた。


「わかったよ、それでいい」


拗ねたように顔を逸らして、奏は同意した。


ほっとして陽は肩の力を抜いた。


「じゃあ、陽の弱点、調子のるとこ」


納得いってないように凪は陽に追撃する。

奏が面白そうに笑う。


「それも、皆知ってんじゃねぇか」


「……そっか」


凪は困ったように笑った。


「陽の弱点は方向音痴だろ」


「えっ!?」


奏が言うと、陽が変な声を上げる。


「確かに」


「そうだな」


すぐに凪と朔も同意した。


「いやいやいやいや、方向音痴じゃねぇだろ!?」


「「「方向音痴」」」


三人の声が揃う。


「えぇっ……」


陽が絶句する。


「だってこの前、コンビニからホテルに戻れなくなって朔に泣きながら電話してたじゃん」


さらっと凪が暴露する。


「そ、それはっ」


「ホテルの中で部屋に戻れなくなったこともあったな」


奏もおかしそうに笑った。


「ゔっ」


「諦めろ」


朔に言われ、陽はがっくりと肩を落とす。


「最後は凪か」


軽く息を吐きながら、朔は凪を見た。


「え?俺の弱点?」


自分を指差しながら、凪が目をぱちぱちとさせる。


「凪の弱点は運転だろ」


奏がさらっと言う。


「え?」


「運転だな」


「凪の運転はヤバい」


朔と陽も、うんうんと頷く。


「そんなことないよっ」


凪が否定するが、三人じっと見られ、凪はたじろぐ。


「えぇ?」


「運転は命に関わるから、自覚しろ」


朔の言葉に凪は驚く。


「え、そんなに?」


「そんなに」


朔の返事に、凪は助けを求めるように奏を見た。


「……俺はお前の運転する車には二度と乗らねぇ」


苦い顔の奏に凪はしゅんとする。


「……わかった」


「気にすんなって!運転出来なくても生きていけるって」


陽が凪の肩を叩きながら、慰める。


「うん、ありがと」


凪は力なく笑った。


たんたんっと朔が資料を揃える。


「さて、2問目は以上だな」


「……まだ2問目かよ」


奏が怠そうに肘をつく。


「奏、真面目にやれ」


すぐに朔に注意される。


「次、行くぞ」


朔は資料に視線を戻した。









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