NOCTIS – Night Archive―メンバーへの10の質問③
「次の質問は……簡単だな」
朔はふっと口元を綻ばせた。
「え、なになに?」
陽が身を乗り出して聞く。
朔はにやっと笑う。
「一番連絡が返ってこないのは誰ですか?」
三人の視線が一斉に奏に向く。
「は?」
奏が口を開けて驚いていた。
「絶対、奏!」
「奏かな」
「まぁ、奏だろ」
三人の意見が揃う。
「以上」
朔が簡潔に切ろうとする。
「いや、ちょっと待て!」
奏が立ち上がって反論する。
「なんだ?」
朔の冷たい目が奏を見上げる。
「俺は返してる」
奏が低い声で言うと、三人が一斉に口にする。
「三日後にな」
「俺なんか一週間後だったぞ!?」
「既読はつくよね」
奏は得意げに腕を組んで、椅子に座り直す。
「ほら、返してんじゃねぇか」
再び三人の冷たい目が奏に集中した。
「普通はすぐに返ってくるんだ」
「一週間後は返したっていわねーんだよっ」
「まぁ、既読つけたらすぐ返すよね」
ぐっと奏は言葉に詰まった。
「逆に朔はすぐ返ってくるよね」
凪が笑顔で言う。
「まぁ、それは社会人として当たり前だろう?凪もすぐ返ってくるぞ」
朔も笑顔で返す。
「陽ですら、その日のうちに返ってくるぞ?」
朔の目が再び冷たく奏を見る。
陽ですら、という言葉に奏は少し悔しくなってしまった。
「……わかったよ、なるべく早く、返すようにする」
絞り出すように言うと、朔は満足げに笑った。
「ちょっ待てっ!」
おさまるかと思いきや、陽が止める。
「『ですら』ってなんだよっ、朔っ!?」
はぁーっと溜め息をついて朔は陽を見た。
「陽だからな」
「だからっ、なんで俺の扱い、雑なの!?」
陽の叫びに朔はめんどくさそうに額を抑えた。
「陽、うるさい」
「いや、だってさぁ……」
朔が手で陽を制する。
「次、4問目」
朔に強制的に進められ、陽はぶつぶつ言いながらも黙った。
「メンバーを動物に例えると?」
さっきまで不機嫌だった陽が元気よく手をあげる。
「はいっはいっ」
朔は現金なものだなと、ちらっと陽を見た。
「陽」
朔に呼ばれると陽は嬉しそうに奏を見た。
「奏!絶対猫!!」
「は?」
テーブルに肘をついていた奏は驚いて陽に目を向ける。
陽はドヤ顔で踏ん反り返る。
「しかもプライド高い黒猫」
ふっと朔が吹き出し、凪もくすくす笑う。
奏は再び不機嫌そうになる。
「うん、奏は猫っぽい」
「あぁ、そっくりだな」
「……俺、猫苦手なんだけど」
陽が大笑いを始める。
「同族嫌悪だろっ、そういうとこも猫っぽいだろ」
ギロっと奏が陽を睨む。
「朔が弱いのも猫と奏だもんね」
にこやかに言う凪に、奏の表情が止まる。
「……お前、それはもういいって」
ふふっと凪は口元を抑えて笑う。
「奏、照れてる」
「照れてない」
奏は即答するが、凪はずっと笑っていた。
ごほん、と朔が咳払いをする。
「奏は猫。他には?」
無理矢理締める朔に凪はまた笑った。
「んー、陽は犬かな」
「えっ、俺、犬っ!?」
はしゃぐ陽に奏が冷たい目を向ける。
「しかもアホっぽい犬な」
「奏っ、お前さっ!!」
またしても言い合いを始める二人に朔は大きく溜め息をついた。
「奏、陽、いい加減にしろ」
二人はそろって朔の方を見て、それから奏はふいっと顔をそらした。
陽は大人しく座り直した。
「朔は鷹っぽいよな」
少し落ち着いてから陽が言い出す。
「鷹?」
朔の眉があがる。
陽は朔を指差す。
「そういうとこだよっ!目つき鋭くて、狙った獲物は逃さないとこ」
「うん、イメージ合ってる」
凪も口元を抑えて笑う。
「……それはお前らが騒ぐからだろ」
苦し紛れのように朔が絞り出す。
その微妙な表情を察した奏が皮肉っぽく笑う。
「お前、意外としつこいもんな」
「奏」
朔の目が鋭くなる。
すぐさま陽が立ち上がり、朔を指差す。
「ほらっ、それだよ!それっ」
ピタリと動きを止めた朔は眉間に皺を寄せて少し考え込む。
そしてまた、絞り出すように。
「……わかった。俺は鷹だな……陽、覚えてろよ」
遠慮の無い朔の鋭い瞳に陽は震え上がって、小さく悲鳴をあげた。
朔はそんなことお構いなしに進行を続けた。
「最後、凪か」
すると、凪がすっと手をあげる。
「俺、自分のことナマケモノだと思ってるんだけど」
「「「は?」」」
三人分の間抜けな声が重なった。
直後、陽が吹き出すように笑った。
「なんで、そーなんだよっ!?」
意外そうに目をぱちぱちさせて、凪は陽を見返した。
「えー?俺意外と動かないでじっとしてるの好きだし」
「お前、ライブ中、めちゃくちゃ動いてんだろ」
横からかけられた奏の言葉にも、凪は悩むでもなく答える。
「ほら、ナマケモノだって必要な時は素早く動くし」
「っていうかさ、字面からして似合わなくね?ナマケモノって」
陽がこらえきれずにぷっと吹き出す。
「えー?そう?」
「お前、意外と豹とかっぽいよな」
奏の言葉に凪が困惑したように笑った。
「俺、肉食じゃないよ?奏でしょ?肉食なの」
「でもさぁ、奏、豹って感じはしないよな」
「俺はあそこまで獰猛じゃねぇ」
「凪は兎じゃねぇ?」
「そんな可愛いもんじゃねぇだろ」
わちゃわちゃと言い合いが続き、収集がつかなくなりそうになる。
朔は軽く息を吐いてから、口を開いた。
「お前ら」
三人の口がピタっと止まる。
朔は順番に三人へ視線を向けた。
「……俺は鹿だと思う」
真面目な表情で朔が言い出す。
叱責が飛んでくると身構えていた奏と陽は拍子抜けした。
「鹿?」
凪が意外そうに声をあげる。
「意外と似合うのか……?」
陽が真剣な表情で考え込む。
「いや、鹿じゃねぇだろ」
奏がすぐに突っ込む。
「えー、じゃあ、何?」
延々と続く議論に、奏はついにめんどくさくなってしまった。
「凪は凪でいいだろ。動物じゃ例えらんねぇ」
朔が呆れたように頭を抱える。
「お前……それじゃ、企画の意味ないだろうが」
奏はめんどくさそうに椅子の背もたれに寄りかかり、踏ん反り返るように朔を見返した。
「だって決まんねぇじゃんか」
「確かに、凪、複雑過ぎてしっくりこねぇな」
陽も椅子にもたれながら、溜め息をついた。
「えー?俺、やっぱナマケモノだと思うんだけどな……」
まだ言い続ける凪に朔も苦笑した。
「わかった。凪は保留で」
ついに朔もそう結論づける。
凪だけが最後まで納得いってないように、ぶつぶつ言っていた。
「やっと4問目かよ……」
その奏の呟きは誰にも聞こえていなかった。




