NOCTIS – Night Archive―メンバーへの10の質問①
「こんにちは。NOCTIS です」
いつものように、朔の挨拶で始まる動画撮影。
今回はテーブルを囲んで座り、和やかな雰囲気で始まる。
「今回のNOCTIS – Night Archiveは、メンバーへの10の質問です」
朔が発表すると、陽が手を叩いて喜ぶ。
「よっしゃー!10どころか100でも200でも答えてやるぜっ」
「お前だけやってろ」
椅子の背もたれにもたれかかり、怠そうに奏が陽を睨む。
凪はくすくす笑って陽を見た。
「永遠に終わんないね」
朔の目が厳しくなる。
「奏、陽、真面目にやれ」
一度そう切ってから、資料に目を落とす。
「今回はノクティアから募集した質問から選びました。では、ひとつめ」
そう言って資料をめくる。
「メンバーそれぞれの第一印象を教えてください」
一瞬、静まる。
朔は三人を見回した。
「では、奏への印象から」
奏がビクッとして朔を見る。
最初に陽が少し苦笑いしながら、答える。
「俺はあれだなぁ……顔良っ、かな」
「……なんだそれ」
奏は微妙な顔で陽を見る。
「だってさぁ、声がいいやついるって聞いて行ったのに、声より前に顔イケメンだったんだもん」
ははっと奏は乾いた笑いをこぼした。
「俺は……危険なやつだな」
朔が答えると、奏は眉をひそめた。
「……否定は、しねぇけど」
「偶然通りかけた非常階段に喧嘩直後の目つきの悪いのがいたら、そうなるだろ」
奏はふいっと顔を背けた。
「……んなもん、よく覚えてんな」
「衝撃だったからな」
ふっと朔は笑う。
それから少しだけ緊張を滲ませた表情で凪を見る。
「凪は?」
凪は柔らかく笑った。
「俺は……夜みたいって思った」
思い出すように瞬きをして、奏を見る。
「……お前さ、美化しすぎなんだよ」
奏は不機嫌そうに返す。
「ふふっ、そんなことないよ」
朔が咳払いをする。
「まぁ……凪は確かにそう言ってたな」
「ね?」
朔の言葉に凪はもう一度柔らかく笑って奏を見た。
奏は少し照れくさそうに顔を逸らす。
「……覚えてねぇよ、そんなもん」
陽がにやにやしながら奏の頬をつつく。
「照れてんなぁ?奏くん?」
奏は勢いよく陽の手を振り払う。
「うるせぇ、黙れ」
それから陽を見て、
「お前の第一印象は今と変わんねぇよ、うるせぇ」
今度は奏がにやっと笑いながら返す。
「はぁっ?!」
陽が変な声を上げる。
「俺も同じだな」
朔も同意する。
凪は口元に手を当てて、考えてから答えた。
「賑やかな人?」
ぷっと奏が吹き出す。
「お前、それうるせぇってことじゃねぇか」
「奏っ、お前ぇぇぇー」
陽が立ち上がり、奏に突っかかる。
即座に朔の手が陽の頭を押さえつける。
「陽、動画だぞ?」
あ、と顔を青くした陽は大人しく椅子に座る。
そして恨めしげに朔を見上げる。
「俺の朔の第一印象は『怖い人』だからなっ」
仕返しのつもりでそう言った陽だが、朔はふっと口元を緩めた。
「光栄だな」
「なんでだよっ」
陽が突っ込む。
凪はまた考え込む。
「朔かぁ……朔はね……救世主?」
三人の顔が凪を見た。
朔が一番固まっている。
「……なんでそうなる?」
凪はにっこり笑った。
「だって、会話続かない俺と奏の間に入ってくれたし、連絡先教えてくれたのも朔だったし」
朔は少しほっとしたように息を吐いた。
「……なんだ、そういうことか」
「うん、俺とNOCTIS繋いでくれた救世主」
陽がぷるぷる震えながら、奏を見る。
「っつーかさぁ、奏お前はさ、人のこと誘っといて連絡先も教えなかったよなっ」
奏は陽に視線を向ける。
「覚えてねぇ」
「嘘だろっ!?」
「まったく、これっぽっちも」
陽がまた立ち上がりかけて、朔に視線を向けられる。
ビクッとして陽は苦笑いした。
「陽は変わってないね」
その様子を見た凪が呆れたように陽に視線を向ける。
「そ、そんなことは……」
どぎまぎと言い返そうとするが、そのまま黙ってしまった。
凪は奏を見る。
「奏は朔の第一印象はどうだったの?」
凪に話を振られ、奏は少しだけ考える。
「……めんどくせぇやつ」
朔の眉がぴくりとあがる。
「なんだって?」
「だってこいつさ、俺は嫌だって言ってんのに、昼休みも放課後も追い回してくんだぜ?」
溜め息を吐き出しながら、奏は当時のことを思い出す。
「……それは第一印象じゃないだろ?」
「一緒だろ?見ず知らずの奴の怪我心配する奴なんて、だいたいめんどくせぇ奴なんだよ」
「普通はするだろ?」
朔は呆れて返す。
「しねぇよ」
奏はすぐに返す。
凪が楽しそうに笑う。
「でも、今は感謝してるもんね?奏?」
そう言われて奏は、一瞬言葉を詰まらせた。
それから観念したように……。
「……あぁ」
と、低い声で答える。
朔も少し照れくさくなったのか、また咳払いをする。
「じゃあ、最後凪だな」
凪が姿勢を正す。
少し緊張したような表情を浮かべた。
朔は少し考えてから、言葉を選んで話す。
「凪は……物静かな奴だなと思ったな」
それから少し笑って、
「ここまで天然だとは思わなかった」
そう零す。
「え……?」
凪は意外そうな顔で朔を見た。
「てんねん……?」
「だから、お前はそれが天然なんだって!」
陽が凪を指差す。
少しだけムッとした表情で凪は陽を見る。
「陽に言われたくない」
「お前……それどういう意味だよ……」
陽は微妙な表情をした。
そこへ朔が割り込んでくる。
「お前ら、喧嘩をするな。陽、凪の第一印象」
「え……」
陽は目を逸らして、気まずそうにもじもじする。
「……凪、怒んなよ?」
「?怒んないよ」
「……ほんとに?」
確認する陽に凪は困ったように息を吐いた。
「怒んないって」
それでもまだ、躊躇するように陽は恐る恐る小声で言った。
「……可愛い子だなって思ったら、男でショックだった……」
凪の表情が一瞬固まる。
ぷっと吹き出すように笑ったのは、朔も奏もほぼ同時だった。
「お前……バカか?」
おかしそうに笑う奏を陽は睨んだ。
「だってさぁ……可愛かっただろ?中学生の凪」
そう言われて、奏は真顔に戻る。
「……いや、まぁ……うん……いや……」
否定も肯定もせず、奏は言葉に詰まる。
そこへ。
「陽?」
凪の鋭い声が飛ぶ。
「ふぇっ?」
陽が情けない声をあげて、凪を振り返る。
にこにこと笑った顔は有無を言わせない迫力があった。
「な、凪っ、お前、怒んないって……」
「怒ってないよ?」
被せ気味に答える。
「ね?怒ってないよ?奏?」
陽の次に視線を向けられ、奏はギクッとして顔を逸らす。
「俺は……なんも言ってねぇ……」
凪の唇の端がゆっくりと持ち上げられる。
「そうだね?まだなんにも言ってないね?俺の第一印象」
普段と違って少し圧のある凪に奏は押された。
「そ、そうだぞ!奏も言えよっ」
陽も必死に矛先を奏に向けさせようとする。
奏はテーブルに肘をついて、その上に顔を乗せる。
そっぽを向いたまま、目線だけを僅かに凪へ向けた。
「……天使」
「「は?」」
朔と陽の声が重なる。
凪は怒りも忘れたのか、驚いた表情で息を呑んだ。
「え……?」
「天使みてぇだと思ったんだよ、バカみてぇだけど」
ぶっきらぼうに返して奏はまた視線をずらした。
朔と陽は恐る恐る凪を見た。
圧ある笑みから、いつもの柔らかい笑みに変わっていた。
「……機嫌治ってら……」
陽が呟くと、凪は再び陽に視線を向ける。
「陽の俺への第一印象、よーく覚えたからね」
「ひぇっ」
陽は肝の冷える思いで身を縮こまらせた。
朔はなんとも言えない複雑な思いで溜め息を吐いて、資料をトントンと整えた。




