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始まりの冬  作者: Karyu
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5−シャグルとシャドル(5)



 俺はシャドルが俺の落下地点の計算とその時に突進する体勢を構え始めているのを見た。


 化け物の癖に思考力は人並みかよ。くそっ、冗談はその突進力だけにしてもらいたいぜ。俺は空中で身を捩りながらプロテクシオン・ロゥを作り出し、僅かだが落下地点をずらしてシャドルの一撃をかわした。


 シャドルは俺を囮と知っていたのか俺には見も向けず、作り出した雪の壁にまたも突進していった。


 シャドルの一撃で雪の壁にぽっかりと巨大な穴があき、その向こう側にはまだ膝を地面についているグガンの姿があった。


 俺は毒づきながらヒエロ・ランスをシャドルの背中に投げつけたが何の効力も発揮せずシャドルの鋼鉄の鎧に弾き飛ばされた。


 グガンは迫り来るシャドルの突進に目を見開き死を覚悟し、シャドルは獰猛な笑みを浮かべながら自分の角を前方に突き出しながらグガンの顔を狙っていた。


 グガンはその場でしゃがみこんだまま、迫るシャドルの歪んだ形相を一瞥し皮肉げな、ご自慢の笑みをシャドルに向けた。


 シャドルはグガンの気が狂ったのかと判断しただけど容赦なくグガンの肉体に大きな風穴を開けて跳ね飛ばした……かのように見えた。


 が、しかしシャドルが角で突き上げたのはグガンの肉体ではなく巨大な丸太であった。


 シャドルがそのことに気付く僅か二秒の間に俺は地面に両手をついてシャドルのいる地点の雪を瞬間冷却、シャドルの足止めをした。


 対するグガンも先程繰りだした術、変換木自術の直後に雪の上ではなく雪の下の大地まで両手を深く入れた。


「我が敵の動きを封ぜよ、木根蔓蛇縛!」


 グガンの術で足元の凍ったシャドルの足場から無数の木の根が現れシャドルの肉体をからみ取っていった。まるで蛇の如く根が自由自在に動き回りシャドルは身動き一つ取れなくなった。


 そこにすかさずカイルが雪の壁を大きく迂回しながら現れ、シャドルまで駆けた。


「我に光の俊敏さを! 俊光!」


 カイルはそう唱え、その走る速度は光速とはいかないまでもかなりの速度でシャドルに駆け寄り、


「雷神の怒り、白雷電!」


 と叫びながらシャドルの鋼鉄の皮膚の一部に両手を押した。


 見る見るうちにカイルの両手の先端から鋭い電気の帯が帯電し始めた。まだまだ術が未熟なのか技が実行されるまで時間が掛かったのだが、それは最初から考慮されていた為二重の足止めが必要だったのだ。


 数秒間かけてカイルの術がシャドルの体内を駆け巡った。シャドルはその間必死に逃げ惑うように体をあばらせていたがグガンの木根蔓蛇縛から逃れることはできなかった。


 シャドルからは何本もの電気の帯が跳ね上がり、辺りに散っていったが静まった頃、シャドルの全身からは湯気が立ち上っていた。カイルの触れたシャドルの皮膚は黒く焦げ、


グガンの木根蔓蛇縛も黒く焦げていた。


 シャドルの目、口、耳、鼻、鋼鉄の皮膚の間から硝煙が立ち上り、目が完全に蒸発し、口からは沸騰しながら血塊がぼとり、ぼとりと不可解な音を立てながら雪原を赤く染めながら溶かしていた。


 カイルはシャドルのすぐ側で腰が抜けたのか座り込んでいた。初めての任務で自分のリーダーが死に、数多くの隊員を目の前で殺されたのだ。無理もない。


 俺は十二になったカイルの傍まで歩み、片手をカイルの頭に置いた。カイルが震える目で俺のことを見上げていた。俺は優しく微笑んでやった。


「よくやったよ」


 と語りかけたが、カイルは嬉しそうでしかし悲しそうな憂いた表情で笑い返してきた。そんな表情を向けられた俺は苦笑いで返すしかなかった。


 グガンはそんな俺達のやり取りを見守りながら、


「いいか、カイル。これが任務というものだ。いつ死ぬかわからない、過酷で残酷だ。でもな、生きてやり遂げたものにだけ生き残れたっていう喜びが味わえるってのも事実だ。だからそんな俺達が今しないといけないことは死んだ連中への弔いだ。わかるよな?」


 しばらくの静寂、そして弱弱しくもカイルは立ち上がり、強みの帯びた双眸で


「はい」


 と返した。


 俺とグガンは互いに見やり笑みを浮かべ、殺された隊員たちの遺体を回収、写真と隊員たちのDNAが採取できる毛、あるいは血をケースに集め、穴を掘って埋葬した。カイルは物悲しくも震える手で自分のリーダーであったタキの写真と毛をケースにしまいこんでいた。


 タキは三十代の無精髭を生やしたチルドレンで俺も昔模擬戦の時に世話になったことがあった。タキはかなりの戦略家で無鉄砲に突っこんでいったらまず勝ち目はなかった。今回の任務で俺たちは一人の有能なチルドレンを失ったことになる……。


 合計十人の遺体を大山の土に埋め、しばらく黙祷を捧げた後、俺とグガンはシャグルとシャドルの処理を行うことにした。


 俺はヒエロ・ランスでシャグルとシャドルの角を切断、毒に触れないように専用のケースに入れ、グガンはシャドル同様シャグルの死体を根で絡み担いできたリュックの中から巨大なハーネスを取り出しそれぞれの死体につなげていった。


 俺はその間、下で待機しているであろう隊員達に連絡を取った。





は、はじめまして、カイルです。あ、本名は瀧野海瑠です。初任務でリーダーであったタキさんが死んでしまいました。ですがシルキさんの励ましのおかげで僕は立ち直ることができました。僕もシルキさんやタキさんのような立派なチルドレンになることが今の夢です。

ちなみに司る力は雷です。12才です。まだまだ未熟なグレード1です。好きな食べ物は雪見大福です。作者さんに問い合わせたところ当分僕の出番はないそうです……。だから今ここで目一杯しゃべっていてもいいですよね? ダメですか? 

だったら作者さんが後の頼みです。もし僕に関して質問などがありましたらお問い合わせください。僕が対応させていただきます。

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