4−シャグルとシャドル(4)
タキの死を目の前で目撃したカイルは雪の中で虚ろな瞳で遠くを眺めていた。体の半分は雪の中に浸かり、シャドルを目の前にしても立ち上がろうとするそぶりは見せなかった。
俺は、カイルに突っこもうとするシャドルにヒエロ・ランスを投げつけたが、鋼鉄の鎧と化した皮膚の前ではなんの傷も残すことはできなかったが、シャドルの視線を俺に向けることはできた。
シャドルはカイルから視線を外し、殺意のこもった目で俺を睨みつけ、すぐさま突進体勢に移行した。
俺は水速転換を展開、シャドルが俺の二、三メートルほど前まで突進してきたところで、水速転換を使い、シャドルの視界から消え、グガンが介抱しているカイルの傍まで走った。
そして視線をグガンとカイルから当惑している様子のシャドルへと向き返し、床に手をついた。手には防寒用のグローブを装着してあるため雪の冷たさは感じなかったが手が雪の中に沈んでいく感触は伝わってきた。
俺はすかさず、
「プロテクシオン・ロゥ!」
と叫んだ。
すると地面の雪が一気に盛り上がり俺たち三人とシャドルを隔離した。しかし、シャドルの持つ思考力から考えてこの場が安全なのは五分程度。その間に新たな作戦を立て、シャドルを倒さなくてはならない。
「おい、カイル大丈夫か?」
グガンの問い掛けでやっとカイルは現実に引っ張り戻された。
「あ、は、はい……」
しかしカイルにはまだタキの死の影響が残っているようだ。
「いいかカイル。ここでお前が何もしなければ俺達全員が死ぬ。それに、俺達が死ねばシャドルが人里降りるかもしれないし、きっとタキも悲しむだろう、お前が死ねばな」
俺はカイルに言った。カイルは黙って俺の話を聞いていたが、聞き終った後、その双眸には決意の意志が見えた。
「わかりました。ぼく、やります」
「そうこなくっちゃな」
三人の中で一番年上、といっても二十代そこそこなんだが、グガンが意気揚々とした様子で言い放った。少なくともカイルの気を和ませるようにだろう。俺もそれに乗り、
「なら膳は急げ、今からシャドルを倒す作戦内容を教える」
一方のシャドルは流騎が視界から一瞬で消えたことに混乱していたが、後ろに振り返るとその姿があったため突進体勢に入った。
が、流騎が地面に手をついた途端に巨大な雪の壁ができたことから尚更困惑し、正常に戻るまでに数秒掛かった。
シャドルは流騎達が見えなくなったので不思議に思ったが、ほぼ人間並みの思考を持っている為、警戒しながら横に広がる雪の壁を観察しながらどう向こう側に到達できるか考えていた。
シャグルがいとも容易く殺されてしまったのでシャドルは敵が昨日殺した四人の人間より遥かに強く、手強いことを認識していた為、シャグルの脳髄を食べる時間がどうしても必要であった。
その為、あまり使うことのない技、動物達を超音波で一種の支配下に置き数で劣勢になるまで自分の認識する敵を襲わせたのだ。
技は上手くいき、シャグルの脳髄を食べ終わるまでの時間が稼げ、敵の数も三人まで減らすことができた。しかしあの突進を見事にかわした二人は注意が必要である。
シャドルはじっと待つのが苦手なのか、流騎の作り出した雪の壁に猛突進を繰り出した。すると流騎のプロテクシオン・ロゥ(水分を凝固させ厚い壁を作り出す技)は激しく振動した。シャドルは一回の突進で雪の壁を半分以上も砕いたのだ。
くそ……、もって後一撃か。どんだけの化け物なんだっ。
俺はシャドルの突進したプロテクシオン・ロゥの振動を肌で感じて悪寒が走った。なんとか、グガンとカイルに作戦内容を知らせることはできたものの果たして上手くいくかどうか。ま、上手くいかないとまずいんだけど……。
「分かったか二人とも? 絶対に死ぬなよ。もし作戦通りにいかなかったら自分のみを守るだけのことに専念しろ。いいな、カイル?」
「は、はい」
「へっ、まさかシルキ、しかも年下に命の大切さを学ぶ日が来るとはな。だが了解したぜ」
皮肉げに笑うグガンを見ながらも俺は、
「健闘を祈る」
とだけ言い残し、自ら作りだしたプロテクシオン・ロゥを跳躍して越えた。高さ三、四メートルはあったが難なく飛び越え、下方に今にも突進しかけているシャドルの姿があった。
俺は右手にヒエロ・ランスを作り出し、シャドルの目の前の雪に投げつけた。ヒエロ・ランスは丁度シャドルの目前の雪の中に刺さり、それを目前で見たシャドルは空中にいる俺の姿を捉えた。
その怪物の目は憤怒の表情に燃えていた。
どうも、一般隊員最後の生き残りの漆です。
なんかあっけなく死んじゃったな……。まだ何もしてないのに。あ、ちなみにシャグルを撃ったのは僕です。
あんま関係ないですね。でもそんなことぐらいしかいえないんですよね悲しいことに。
あ、そうそう今回リーダーだったタキさんはいい人でしたよ、新人のカイル庇って死んじゃったときもタキさんらしい死に方だったなとおもってます。
というより、作者あなた今回殺しすぎじゃないですか?
作〉気のせいではないのでしょうか(汗




