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始まりの冬  作者: Karyu
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3−シャグルとシャドル(3)



 一時間ほど歩いていると、前方で先行していた一人の一般隊員が前を向きながら右手で俺達に合図を送った。


 俺たちは隊列を乱さず体勢を低く構え胸ポケットから小さな双眼鏡を取り出し前方を見た。


 すると俺の約百メートル先に深緑と黄緑色をした二つの巨大なサイの妖怪、シャグルとシャドルが雪原に寄り添っていた。


 双眼鏡を更にアップさせると二頭の口元は朱色に染められ、雪で敷き詰められた雪原には一頭の鹿の死体と周りは散乱する血で染まっていた。


 どうやらシャグルとシャドルは鹿の血のせいで俺達の匂いに感づいてはいないようだ。そこで俺は後方を向き後ろに控えていた四人の一般隊員に作戦通りに指示を促し、その指示を受けた四人は半分に別れ一方は右へ、一方は左へと進んでいった。


 俺はグガンに耳打ちをし、


「オッケー」 


 とグガンが声を潜めて返してきたので、周りを見回し隊列の再確認を行った。


 すると今回の任務のリーダーであるタキが胸元についている小型スピーカーで作戦開始の合図を送った。


 タキの合図を受けて先ほど二手に分かれた四人の一般隊員は担いできたライフル銃をシャグルに向け、一斉に銃弾を放った。


 乾いた銃声が雪原をこだまする中、シャグルの体から四つの血の線が噴出し、シャグルは重そうに雪の中に倒れた。


 シャドルは一瞬にして状況を把握したのか、一般隊員たちが第二度目の銃弾を撃つ前に大きく跳躍した。


 シャドルは五、六メートル程宙に浮かび上がり、落下すると共に、ライフル銃を持った二人の一般隊員に容赦なくのしかかった。


 奇妙な音と共にその二人は血塊となって雪原に二つの赤い跡を残した。


 その光景をすぐそばで見ていた俺はすぐさま立ち上がり、皆シャドルから距離を置いたが、後れを取った一人のチルドレンと二人の一般隊員はシャドルの突進に全身の骨を砕かれながら吹き飛ばされた。


 なんて速さだ……。くそっ、こっちは残り八人。チルドレンは五人入るが一般隊員の数は三人にまで減った。


 シャドルはすぐさま俺達のほうを振り向き、鋭い眼光を向けながら雄叫びを上げた。その瞬間、何もなかった雪原の中や、空の上から野生の動物達がいっせいに現れた。


 一瞬、俺達の中に動揺が生まれたが、すぐさま元の戦闘体制に戻り、迫り来る動物達を倒していく。


 その間、シャドルは責めては来ず、不思議に思ったが休みを知らない動物達の波の対処に俺は専念するしかなかった。


 俺はヒエロ・ランスで熊や鹿、さらには空から迫る鷹や烏を薙いでいったがきりがなかった。


 元はといえば冬眠、冬篭りしているはずの動物達である、冬のために体力を温存してきていた野生の動物達の勢いは凄まじく、俺以外の隊員も隙をつかれ倒れていった。


 俺は、


「グガン!」


 と叫び、


「おうよっ!」


 とグガンが返答してきたので、二人で一度後方に跳躍した。


 それに気付いた動物達が一斉に俺達二人に躍り出たが、次の瞬間、その動物たちは凍りついた。俺とグガンが戦闘中に撒いたグガン特性の毒の仕込まれたまきびしを踏んだ動物達は一瞬で体のいたるところが動かなくなり、俺が一気に地面の雪を瞬間的に解凍、冷却し動物達を一気に凍らせたのだ。


 そこで動物達は動かなくなり、恐怖したのか、動ける他の動物達は逃げるかのように俺達の視界から消えた。


 周りには無様な姿の生き物の死体が散乱していた。勿論ルネサンスの隊員の死体もあり、俺たちは残り五人となった。


 残ったのは俺とグガン、今回の任務のリーダーのタキにタキの下に就いている少年カイルと一般隊員の漆。


 しかし次の一瞬、俺達の間に恐怖の旋律が駆け巡った。なぜならシャドルがシャグルの死体に貪りついていたのだ。シャドルは主にシャグルの脳髄と内臓を貪っていた。


 書類にはシャグルかシャドルの一方が死に至った場合、もう一方はその死体の肉体、主に脳部分と内臓を食べる。すると生き残った一方の生態能力は向上するという記述が添えられていたからである。


 シャグルの内臓を食べ終わったシャドルはゆっくりとそのシャグルの血に染まった黄緑色の顔を俺達に向け、睨んだ。


 俺は毒づき、ヒエロ・ランスを構えたがシャドルは一気に突進してきた。その速さは俺の水速転換には及ばないもののそれほどの速度で突進してきた。俺やグガン、タキはなんとか振り切れたが漆とカイルは避けきれず、その場で呆然と立ち尽くしていた。


 それに気付いたタキは避けようとしていた足を踏みとどめ、


「くっ、カイル!」


叫びながらタキは自分の後方にいたカイルを横に突き飛ばした。


「あっ!!」


 と口にしたカイルはそのまま地面と平行しながら飛ばされながら、シャドルの突進により吹き飛ばされたタキと漆の最後の姿を捉えた。


 俺とグガンはシャドルの突進を避け、カイル同様吹き飛ばされたタキと漆の姿を横目で見た。


 二人の死を悔やむ間もなく、シャドルは今度はカイルのほうに向きかえった。その顔には殺戮を楽しむかのような笑みを浮かべ、カイルを睨みつけていた……。





失礼する、タキだ。扱える能力は水だった。

本名は滝だ。だがもうそんなことは関係ないだろうな。

今はカイルのリーダーをやっていたのに死んで無念極まりない。

ただカイルの生存を望む。そして私と一緒に死んでしまった漆も無念だった。

すべて私が無力な結果だ。

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