2−シャグルとシャドル(2)
映像上のハヤブサが俺達一同を見渡し、手に握られた書類を見て頷き、その重厚な口を開いた。
「新年、新世紀そうそう申し訳ないのだが君達に集まってもらったのは他でもない、任務の為だ」
ハヤブサがそういい終わらないうちにホールの中の緊張感が少しだが高まり、皆真剣な表情に変わった。俺も合わせてそれ風な顔をする。
「昨日の大晦日、若い男女五名があの大山で新年を迎えようとしてテントを張ろうとしたときに何者かに襲われ今朝早く大山の麓で遺体となって発見された。報道関係では転落死したとされていたが真実は違う。この男女五名はシャグルとシャドルによって刺殺されたと判断された。ここにある書類にシャグルとシャドルの詳細が載っているので後ほど確認してくれたまえ。
そこで我々ルネサンスはこれより大山に赴きシャグルとシャドルの殲滅に向かう。新たな犠牲者が出る前になんとしてでもこの怪物を殲滅する必要がある。作戦の詳細もこの書類に載っているので目を通してくれたまえ。それと今回は特殊なスーツが新たに配布されたのでそれについての情報にも目を通して置くように。作戦開始時間は三時間後の1300時。忘れるなよ」
ハヤブサの等身大映像は切れ、ホールにライトが再び灯された。俺はグガンが取ってきてくれた書類の内の一つを手に取り、読み始めた。
シャグルとシャドルというのは百二十年ほど前にアフリカで目撃された双子の妖怪のことだ。自然現象の一種で偶然妊娠中のサイのメスが火山の溶岩の巻き添えになり死んだのだが、その時すでに出産が始まっており、生まれた双子のサイが溶岩の熱により遺伝子が突然変異したのだ。それにより生まれたサイの双子は深緑と黄緑の皮膚を持ち、溶岩の熱さえ通さない鋼鉄の皮膚、一突きで即死に至るほどの毒をもった角に加え人並みの知識を持つことが確認されている。
当時のシャグルとシャドルは人々の住む町を荒らしまわり多数の死者を出したのだが当時にも一種の自然現象により人並みならぬ能力を持った一人の人間にシャグルとシャドルは退治された。
それ以降シャグルとシャドルの目撃情報はこの百年やそこらで三件程度であった。しかし、その都度死者は出ており、毎回その双子のサイの妖怪は知能指数が上がってきていることも解明された。
その主な理由がシャグルとシャドルの能力にあった。それは生きている間に他の動物に角に仕組まれた毒物を注入し、なん世代後かの自分の子孫に自分達の能力や記憶を残すというのだ。毒を仕込まれた動物はサイに接近したときに毒が自動的に空気感染をするのだがシャグルとシャドルの主な生息地が山の中の為シャグルとシャドルの目撃情報、すなわち出産率は低いのである。
一通り書類に目を通し終わると、他の一同も読み終わったらしく、ホールから入り口とは違った別室へと向かった。
俺はグガンや他のチルドレン隊員達と一緒にその別室へと歩を進めた。別室はロッカールーム形式になっており、名前順に各自の特殊登山スーツが並べられていた。
俺は自分のネームタグを見つけスーツに着替え始めた。他の隊員も着替え始め、全員が着替え終わるのに半時ほど掛かった。
スーツは登山用にロープやハーネスは勿論のこと、ブーツも登山をするときと崖登りをするときようにと分かれていた。
俺を含めた十七人の隊員は時間通りに運送トラックに乗り込み、特急宅配便と書かれたアルミ製のトラックの荷台の中で一時間ほど揺られながら大山の麓までついた。
大山は昔、とはいっても二十年ほど前に突然噴火した。その時大山は何らかの理由により、二百メートルほど浮き上がりいまでは二千メートルほどまで標高が高くなった。しかし、その二百メートルほど浮き上がった大山の最初の標高二百メートルは断崖絶壁と化している。
その為あまり一般人は登ろうともせず、チャレンジャー精神旺盛な登山者達が登りに来る登山スポットと化している。
今回のシャグルとシャドルの確認が決定付けられた四人の若い遺体もすべてが登山者であった。
俺たちを乗せたバスはそのまま立ち入り禁止ゾーンまで入っていき、そこにいた一人の警官の許可を得て大山の麓まで到着した。
早速トラックを出た俺たちは、お互いのハーネスを連結させ、登山が得意なチルドレン隊員の能力で上へ上へと引っ張り上げられた。
何の苦労もせずにあがる為、俺はかなり心地よかったが、当のチルドレンは顔を真っ赤にし意地というものを馳せていた。
約十分ものロッククライミングを終えたそのチルドレン隊員は自分の仕事が終わったので早々に麓まで身軽に降りていった。しかしさすがに十五、六人の体重に疲れたのか、麓についた途端足元がふらついていた。
そして登山用アシスタントの一般隊員の三名も麓へと降りた。
俺は書類に目を通しただけなのでわからなかったが大山には初めて訪れた。想像では、噴火した際に火山灰の影響で生き物の絶えた山だと思っていたのだが、現実に俺の視界に広がる風景は一般的に言う山そのものであった。
だが冬なだけあって雪が一面に積もっていた。ハヤブサから配布された書類によると、後二千メートルしたところでシャグルとシャドルの生態区域に入る。
俺達十三人の隊員は白い息を吐きながらも慎重に行動を開始した。
俺の足が一歩一歩前に進むたび、誰も踏み入れたことのない雪原に小さな足跡が刻まれていった。
よっ、俺は具眼だ。コードネームはグガンだ。それが俺の苗字なのか名前の中なのか作者に聞いてくれ。俺はしらない。
ちなみにグレード5だ。シルキの奴はいいよな俺より若くてスペクタクルなんてもんになりやがった。
ま、嫉妬はしてないけどな。ちなみに扱える能力は森だ。そういやシルキの元リーダーのトウキも森だったな。
雑談過ぎたな、強いていうなら俺はセロリが大好きだ。
それにしても登山は辛いな……。しかも雪だしな。




