6−シャグルとシャドル(6)
俺たち三人は最初登ってきた崖の上で迎えが来るのを待った。その間、俺はカイルと少し話をすることにした。
「なあ、カイル」
「は、はい。なんですか先輩?」
先輩か……なんかいい響きだな。おっと、余韻に浸ってる場合じゃなかった。
「お前いつMBSに入った?」
「えっ? えーとですね、確か二年前ですけど」
「それでタキとはいつ知り合った?」
「あ、はい。タキさんとは丁度去年からお世話になっていました」
「そっか。今日が初任務だったよな」
「はい……」
カイルは少し寂しげな口調で答えていた。
「ま、こういったこともあるって事だ。もう割り切るしかないしな」
俺は思い出し話をするかのようにカイルにいった。
「先輩、シルキ先輩にも同じことがあったんですか?」
カイルの奴、結構感が働くな……。
「ああ、俺もお前同様、リーダーを失ったことがある。お前みたいに山の中でな」
「そ、そうだったんですか……。やっぱりその時は寂しかったですか?」
「ああ、でも寂しいってよりも悔しかったな」
「悔しかった?」
「ああ、俺が弱いばっかりに好きじゃなかったけど頼れる男を殺してしまったんだな。と、思ってな」
俺は昔、俺のリーダーであったトウキのことを思い出しながら澄んだ空を見上げた。俺は白い息を吐きながら続けた、
「その時、俺がリーダーを失ったときからかな。俺は強くなってやるって思ったのは」
「そうだったんですか。ぼ、ぼくも頑張れば先輩みたいになれますかね?」
カイルは両手を握り締めながら俺のことを必死に見上げてきた。
俺が口を開くよりも先に、俺達の後ろで会話を盗み聞いていたグガンが、
「いいのかカイル? シルキみたいになっちまったら友達ができなくなっちまうぜー」
「えっ? そうなんですか?」
「なわけないだろ」
俺は言い捨てたが、グガンが
「な、見ただろこの態度。こんな風になっちまったら一生友はできんし誰もなろうとは思ってくれん。それでもいいのかカイル?」
「えっ、そ、それはちょっと……」
「おい、カイルにでま吹き込むな!」
「はいはい、シルキ隊員はおっかねー、おっかねーっと」
グガンは訳のわからない動作で手を振り回し、トランシーバーを取り出し、談笑し始めた。
「いいか、カイル。ああいった人種の方が友ってのはできにくいんだ。覚えてろ」
「はは、わかりました」
カイルの緊張感もほぐれてきたようである。
「そういえばそうと、さっきの技よかったぞ」
「あ、ありがとうございます」
「ただ、もうちょっと筋を磨かなきゃな」
「はいっ」
カイルは少し元気のある声で返事をした。
俺とカイルはそれからもしばらく会話を交えたが五分ほどで麓から隊員が迎えに来た。迎えに来た隊員は俺達を崖の上まで運んでくれたチルドレンで、すでに報告は済ましているため他の隊員は来なかったが、そのチルドレン隊員の表情は仄かに影が差していた。
恐らく知り合いの隊員の内の誰かが死んだのだろう。
俺達とシャグルとシャドルはそのチルドレンに麓まで降ろされ、そのまま乗ってきたトラックで本部まで戻った。
時計を見ると午後三時。トラックの中は来たときの当初より遥かに人数が少なく、がらんとしていた。
俺は早速、トラックの中に置かれているコンピューターで本部へと報告書をうちはじめた。一方のグガンは呑気に寝そべっていた。
くそ、本来ならグガンの仕事をなんで俺が代行しなければならないんだ。あのハヤブサ総司令官も嫌味なことしてくれる。わざわざ任務用の書類にまで俺の担当が報告書制作って書かなくてもいいだろうに。
そんなこんなで愚痴っている間に鳥取ルネサンス本部についてしまった。一応報告書は打ち終えたが、まだまだ任務の後始末があるため、気が重い。
俺はグガンとカイルとともに任務を言い渡されたホールに戻りモニター上のハヤブサと少ない会話を交わした後、次の任務までの待機期間とお約束どおりの労いの言葉をもらって散り散りに別れた。
リーダーをなくしたカイルはハヤブサとホールに残り今後の処置を決めるようだ。
俺は今日中に広島に帰らなければならないので、いそいでスーツを私服に着替えた。そのままレッドローズ住宅街から出て米子駅に向かった。
とんだ正月になっちまったなと思いながら、自分の苦労を労う為お節駅弁を買って、電車の中で安らかな仮眠をとった。
お初にお目にかかるな。私がハヤブサだ。
そして私が鳥取ルネサンス本部の総司令だ。タキ、それに他の隊員達には残念ではあったが任務となっては仕方があるまい。それが組織であり秩序を保つ為に必要だからだ。私も昔、情に燃えていたが組織はトップだけが憎まれ役でいいのだ。おっと、少し話しが長くなったな。ちなみに私はチルドレンではない。それではまた次回会おう。




