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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
1章 転生と人形遣い
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7話 初めての引っ越し 新居到着編

 馬車も治り、旅も再開となった


 旅の道連れは以下の人物達(?)


・天才1歳児、月村レイジ

・万能メイド、アリサさん

・ワイルドな人形、ポチ

・先程助けた女の子


・運転手に、人間のメイドさん(星見さんと言うらしい)


 向き合って座る女の子は警戒した表情を浮かべている

 乗らせるのは大変だったそうだが

 それはまぁ・・・アリサさんの手腕ですよ、はい


 アリサさん曰く

 女の子はビックリする程の勢いで食べ、直に動ける様になったらしい

 全く喋らないが、こちらを警戒しているらしく

 馬車の中では居心地が悪そうにしている


 そして何故か俺のことをじぃーと見ている


 何だよ

 照れるじゃねえか

 あんまり見つめるなよ・・・


 そんなに一歳児が珍しいのか?

 俺より珍しい謎生物が居るだろうに・・・


「おい、小僧

 俺様はやっぱり暇だ、さっきの休憩だって俺様は頑張って働いたんだぞ?

 俺様が休みを満喫するまで待つのが筋ってもんじゃねぇか・・・」


 コワい顔の縫いぐるみは、コミカルに表情を変えてみせる


・・・今更だが、どうやって表情を変えているんだ?

 魔法だから深く突っ込んでは駄目な気もするが・・・


 そう、女の子よ、この不思議生物を不思議がれよ

 俺をじぃーと見るなよ!


 俺がそんなことを考えているとアリサは女の子を睨みつけた


「・・・助けられた分際で、マスターに危害を加えるおつもりなら、相応の処置をさせて頂きますが?」


 言われた女の子は怯えて顔を伏せた

 身体が震えている


 アリサさん、やり過ぎではないですか?

 その眼光、3歳児にはキツすぎます

 大人だって逃げ出しますよ・・・


「おいおい、アリサちゃん?

 そんなに虐めてやるなよ、可愛い子猫ちゃんが泣いてるぜ?」


 ポチの台詞はガン無視ですねアリサさん

 ポチは諦めたのか居眠りを始めやがった、平和なやつ


 女の子はポツリポツリと声を出した


「ゴメン・・・なさい

 赤ちゃん見たこと無かったから・・・可愛いし・・・」

 

 震えた声でそう言った


 やっぱりそうか、なんか物珍しそうな目付きだったからな


 赤ちゃんっていうか、幼児なんだけどな・・・

 可愛いは止してくれ、照れる


「そうですか、マスターは可愛らしいですから見蕩れるのも解りますが

 貴女を救ってくれたお方です、じぃーと見つめるなど下品なマネはお止め下さい」


 アリサが緊張を解いたのが解った

 俺が褒められたからだろうか?


 つーかアリサさん?

 俺の心の声が聞こえるのに、俺のことを可愛いとか思ってくれてんのか・・・

 止めてくれ、悶え死ぬ・・・


 困惑した表情で女の子は聞き返す


「その・・・赤ちゃんが、あたしを助けてくれたの?」


 女の子の方も緊張が解けたらしい

 声に震えが無くなる


 アリサは笑顔で応じた


「ええ、マスターの御慈悲によるものです

 これからの貴女の処遇も考えておられるご様子ですので、マスターに任せておけば悪い様にはなりません」


 そう言って俺の方を見たアリサを

 女の子は信じられない物を見る様に見つめた


 まぁ、そうだよな

 一歳児の幼児が助けてくれたとは思わない筈だ

 アリサのことは変人の様に見えるかもな・・・


 ココで言うのもアレだが、俺は一応喋れる

 日本人だった時の発音の癖が抜けていないため、まだ、上手くは喋れないが・・・


 俺、直々に話しかけようか?

 普段はアリサさんが代弁してくれるし、アリサさんとは言葉を用いずとも会話が成立するから、誰かと喋るのはこの世界に生まれて初めてかもしれない・・・ポチとの意思疎通? あの縫いぐるみが俺の話を聞くと思うのか?


 大きく息を吸う、久しぶりの発声だ気合いが入る


「ああ、俺が君を助けた、悪い様にはしないから警戒しないでくれ」


 ふう、結構スムーズに発声出来た

 俺の声、意外と可愛らしいな・・・将来は美声になるやもしれん・・・


 しかし何故だ?

 何故、彼女は警戒の色を強くした!?

 謎だ・・・


「・・・小僧喋れたんだな、それなら普段から喋りゃいいのに、まあいっか


 それとな小僧、俺様はお前の口調と身体のギャップが嫌いじゃねぇが

 世間一般から見て、その口調は止めとけ

 ただ、不気味がられるだけだぜ・・・」


 起きていたポチが的確な助言をくれる


・・・そうか、そうだよな

 普通の人から見ればOUTだよな、不気味だよな・・・コレから口調には気をつけよう


『あれれぇ〜』とか『なんか変だぞぉ〜』とか練習した方がいいな

 それにはまず、眼鏡が必要だ

 後、麻酔銃・・・あっ! 全部アリサに言わせりゃ良いじゃん、麻酔銃も声変える奴も要らないじゃん!


 喋らない口実だけが増えて行く・・・


「マスター・・・流石にこれから先全て私が話す訳にも行きません

 人と喋る練習をして下さい・・・」


 窘められた

 簡単な方だけ選んでたら駄目か・・・


 女の子を見る、次こそは・・・


「うん、僕が君を助けたの、大丈夫ぅ? 怪我は無い?」


 ポチが笑った、あのアリサでさえ笑いを堪えるのに必死だ、女の子はポカーンとしてる


 しっ、失礼な奴らだな、何が駄目なんだ何が?


「マスター・・・その話し方は・・・クスクス・・・無いです」


「キャラじゃネェよ小僧、ケタケタケタケタ

 それにもう手遅れだろうに・・・

 もう駄目、俺様死ぬ・・・ケタケタケタケタ!!!」


 五月蝿いなコイツ等

 人がどんだけ・・・


 ふと、女の子を見る

 何が何だか解らないだろうに笑っていた・・・


 笑いは世界の共通言語・・・

 そんな、どこがで聞いた言葉が頭を過る、なら笑わせてやるぜ、全力でな!!


 アリサを見る、まだ笑いを堪えている

 こんな彼女は初めて見るが丁度いい、そのダム決壊させてやる!!


「アリサぁ〜、みんなが僕を笑うんだ、たすけてよぉ〜」


 渾身の泣きまねで、さっき以上の演技で、愛らしい声色で・・・


 この日は、俺がアリサを倒した記念日となった



 女の子の名前は、サヤカというらしい

 苗字を聞いたのだが覚えていないとのこと・・・

 かなり幼い頃に人攫いに攫われて、奴隷になったという話だ


 サヤカと言う名前は、彼女を買った貴族の男が奴隷の女性全員に付けた名前らしい

 気色の悪い男も居たもんだ・・・


 笑いによって緊張が解れたサヤカは直に寝てしまった

 俺も睡魔さんが迎えに来る、身を委ねて夢の世界へ・・・



 目が覚めると見知らぬ天井


 天井は板で作られており、前世での爺ちゃんの家を思いだす

 確か、爺ちゃんの家は築60年の木造建築だった筈、懐かしい


 俺を懐かしくさせる物がもう1つ


 畳である

 畳・・・それは日本人の魂、心の故郷・・・TATAMI


 うん、これが和風ファンタージーに良い所だよ

 世界に畳が存在する、それだけで安心出来る

 俺はみっともなくも、ゴロゴロ転がってみた


 うわー、久しぶりの畳、マジ楽しい・・・


 視線を感じる、やばい確実にみっともない所を見られた

 身体を起こすと、やはりというか、アリサさん


「おはよう御座いますマスター、お楽しみの所失礼します」


 アリサの後ろには襖がある、襖は開けられておりその奥の部屋も畳、その奥も畳み、また奥も畳み、畳、畳、畳・・・やばい、大奥ごっこが出来る


「30分程前に、月村家保有の別荘の1つ、旧三日月家、家元の屋敷『三日月家邸宅』に到着致しました」



 三日月家邸宅・・・

 一言で言うなら武家屋敷

 とてつもなく広大な敷地で着物着たお侍さんとか歩いてそう

 奇麗な日本庭園とかもある、ししおどしの音が心地よい


 屋敷の周りは竹林となっており趣を感じる

 死体とか埋まってそう・・・


 何故、月村家の屋敷なのに『三日月家邸宅』なのか?


 それはアリサさんに説明してもらった


 元々、月村家はこの国における人形遣いの家元だったらしい

 人形浄瑠璃とかか・・・よく解らん

 俺の世界でいう、日本人形とか作っていたのかもしれんが・・・


 その家の名は『三日月家』、『月村家』の前身の名である


 まぁ、その時点で魔法的な術を用いていたのは確かだ

 現在の月村家の『家伝魔法』の殆どはこの時点で確立していた


 現にこの家には魔術的な結界に守られており、歴代の月村家頭首はこの屋敷で人形制作を学んだのだとか


『三日月家』が『月村家』に名前を変えたのは100年程前、この国に根を下ろした異国の魔術師の一族を家に招き入れたことに由来する


 月村家の招き入れた一族は、『ムーンランド家』・・・

 彼等は所謂、錬金術師の一族だったらしい


 ここで疑問なのだが、なぜ、得体の知れない外国人を家に招き入れたのか?


 アリサさんはニコリと笑って答えてくれた


「当時の三日月家は人形遣いとして、一種の行き詰まりを感じていたそうです

 当時の頭首は、外来の魔術を取り入れることで家の更なる発展を期待したのでしょう


 そして、それにより三日月家は更なる発展を遂げます」


 まず、『偽りの魂』の完成

 錬金術の技術で完成させたこの技術で

 月村家は人形に、人間と変わらない命を与えることに成功する


 次に外来の、人形制作の技術を取り入れたこと

 

 特に『ドール』の技術はここで完成したと言ってもいい


 この成功で国内屈指の勢力まで成長した三日月家は、その名をムーンランドの功績を讃え家名を『月村家』に変え


 その後の『大戦』での功績から、七大貴族の一角に数えられる様になる

 因みに、七大貴族の半数が月村家と酷似した過程で力を付けた家なのだとか・・・


 我が家の歴史は複雑だ・・・


 

 

 月村家の歴史とか変な所があったらスイマセン

 この世界の歴史は、これから徐々に明かして行く予定です

 どうかお付き合い下さい


 あと、一言

 畳の魔力は素晴らしい

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