8話 初めての引っ越し 引っ越し終了編
俺の目の前には閉じられた襖・・・
それを開いた前には、また閉じられた襖があるだろう
その次も、また次も・・・
俺は大奥ごっこを実行しようとしていた
特に意味はない、襖開いても、また襖というエンドレスを実感したかったのだ
大きな振りを付けて(ハイハイで)走り出す
俺は(ハイハイで)走るのが下手なので、ヨタヨタして転けそうになりながら襖に到着した・・・
最初の襖に到着、ココで襖を解放・・・出来なかった・・・
理由その1
襖の引き手に手が届かない
背が低いので仕方ない(ハイハイだしな・・・、掴まり立ちも出来ない俺って・・・)
理由その2
引き手に手が届かなくても諦めなかった俺は
引き手に頼らずに、力尽くで開けようとした・・・
ビクともしなかった・・・
この襖、動かないのか?
いや、アリサは簡単に開いてたしな・・・
あれか?
一歳児の筋力では無理なのか?
それとも俺が非力なのか?
俺が非力なのだろうなぁ・・・
成長が遅い自覚はある
だって掴まり立ちすら出来ないもん・・・
俺がハイハイが出来る様になったのは実はココ最近だ
現在、俺は、掴まり立ちすら出来ません・・・
自分の成長が遅いのを知ったのは、前の屋敷に居た当時、メイドになって半年の新人だった・星見さんと、メイド長を勤めていた女性との会話を聞いたのに由来する
その会話は真夜中に聞こえた、寝苦しい夜だった・・・
「・・・星見さん、貴女には確か歳の離れた姉妹が居たわね?
その妹さん・・・どれくらいで掴まり立ちを始めました?」
その日はアリサさん、夜、買い物に出かけていたな・・・今、思えばポチの材料買いに行ってたのか
アリサさんに代わりを頼まれたのが、メイド長さんと星見さんだった・・・
「えっ、確か、1歳になる前に始めたと思いますけど・・・」
「そっ、そうなの、そうなんだへぇー・・・
・・・因みに歩き出したのは何時頃からかしら?」
「・・・1歳の誕生日が過ぎて、4ヶ月後くらいですが・・・どうしたんですか?」
メイド長さんの声が小声になる
耳を凝らす・・・この会話は聞かねばならん
「・・・実はレイジ様、来週で1歳と7ヶ月になるのですが・・・
まだ、掴まり立ちすら覚えていらっしゃらないのです・・・
アリサさんには相談したのですが、アリサさん・・・
『マスターの健康状態は正常です、マスターのことです直に歩ける様になるでしょう』
て、言って聞かないのです
お医者様に連れて行く必要は無いって・・・
・・・でも、いくらなんでも遅すぎない?
ハイハイを始めたのも最近なのよ、どう思います星見さん?」
多分だが、星見さんは複雑な顔してたろうな・・・
焦った声が聞こえて来た・・・
「先輩、アレですよ、アレ・・・
私の従姉妹なんて、1歳と5ヶ月で歩き出したそうですし、そんな遅く無いと思いますよ?
心配しなくても大丈夫ですって」
「歩き出したのが、それくらいでしょう?
・・・レイジ様は、掴まり立ちも・・・」
そこでアリサさんが帰って来たから、会話は中断したが・・・
アリサさんも会話が聞こえていたのか、二人を睨み
二人も気まずそうにしてたな・・・
俺は枕を濡らしながら寝たっけ・・・
その日から俺は、『歩く』練習を始めたのだが・・・
今の所、歩けない、掴まり立ちすら握力の無さに挫折している・・・
俺が襖の前で絶望していると
襖が開き、アリサと、アリサに連れられたサヤカが現れた
アリサは、複雑な表情をしている
「・・・どうなさいましたか、マスター?」
俺の悲痛は聞こえてるだろ?
■
座布団引いて向かい合う俺と、アリサ&サヤカ・・・俺は座布団の上で座るしか無い訳だが・・・
「マスター、引越は滞り無く終了致しました」
どうやら俺が一人遊びに興じている間に、アリサさんは引越を終了させたらしい
メイドはアリサと星見さんだけなので、よく二人でこの短時間に終わらせれたなと感心する
「ええ、元々、荷物は少なかったですし
ここの管理を任せていた者が、前日に掃除を終わらせておりましたので」
管理している人が居るのか?
「はい、彼女は今、街に出かけておりますので
後日、改めてご紹介致します」
解った
俺達二人の会話を黙って聞いていたサヤカは、凄く怪訝そうな顔をしている・・・
しまった・・・
いつものノリでアリサと会話してた・・・
声だして会話しないとな、駄目人間になる・・・
あー
あーー
発声練習終了
また、怪訝そうな顔されたが・・・
「あの・・・、すみませんサヤカさん、ちゃんと声だして喋ります・・・」
俺が言うとサヤカさんは、お願いします、と頭を下げた
アリサがサヤカを見ながら話しだす
「ここにサヤカさんを連れて来たのは、マスターにご提案があったからです」
アリサが俺に提案?
興味深いな・・・
因みに、俺の心はアリサに読まれても、俺はアリサの心は感情の起伏しか解らん
「なんだ? 教えてくれ」
「はい、この提案はマスターの抱える懸念を解消出来る物です
サヤカさんを月村家でメイドとして召し抱えては如何でしょう?」
どういう意味だ?
サヤカは奴隷の身分だから仕事を与えるって話か?
それなら別にメイドじゃ無くても良いと思うが・・・
つーか、それと俺の懸念(歩けないこと)が何の関係がある・・・
年齢も、サヤカは3歳だぞ・・・
とりあえずココだけは聞いておかなければ・・・
「別に雇うことに関しては依存無いが
サヤカは3歳だぞ働けるのか?」
「はい、
勿論、メイドとしての教育は施しますが
必要なのは、月村家のメイドという肩書きです
奴隷である彼女には、安定した身分が必要なのです」
・・・なるほど身分か・・・忘れていた
何処の世界でも共通だろうが、奴隷は身分が低い
俺がサヤカを助けると決めた時点で、アリサは、サヤカから奴隷という身分は消さねばならないと考えてくれていたらしい
俺に対する助言の1つとして用意していたのだとか
そこで、月村家のメイド、という肩書きは十二分に安定した身分と言える
「でも、何故、メイドに拘るんだ?
それだったら他の仕事でもいいだろ・・・
それに、俺の懸念事項と何の関係がある?」
「理由は幾つか御座いますので、ご説明させて頂きます
1つ目に
メイドならば常にマスターのお側に居ることが出来
彼女を奴隷として買った者の魔の手から守ることが出来ます
2つ目に
彼女にはマスターの遊び相手を務めてもらおうと考えています
星見さんと話し合った結果、マスターにはもっと子供らしく自由して差し上げる方が、マスターの為になると考えたからです
遊びで動くことで、懸念事項も解消が期待出来ます
3つ目に
単純な人員不足が原因です
しかし、荒崎を警戒しなければならない以上
本家からこれ以上の人員を割くと、目立ってしまいます
暗殺者が差し向けられた場合、私でも対処し切れない自体に陥る可能性があります
万が一に備え彼女をメイドとして育て
マスターの労働力として機能してもらいます」
うん、文句も出ない
俺って、アリサ無しじゃ何も考えてないな・・・
サヤカの方を見る
俺としても、歩ける様になる可能性があるなら藁にも縋りたいのだが
本人の意思もあるだろう
サヤカは真剣に話を聞いている
意味解って聞いているのか?
「サヤカさんはそれで良いですか?」
「あたしは何でもいい・・・あそこに帰らなくて良いならなんでもいい・・・」
そんなに酷い所だったのだろうか?
サヤカさんは俯いてしまった、顔が暗いな
サヤカの人生は俺の様な奴では、想像も出来ない程に壮絶な物なのだろう・・・
少し考えた後
直に顔を上げ、サヤカさんは真っすぐに俺を見た
「あたしは・・・月村家のメイドになる!」
一呼吸置いて告げられたその言葉は
真っすぐに俺に向けられた悲鳴の様に感じた・・・
作中、触れましたが
人が歩ける様になるのには個人差があります
見守ることも大事だと作者は考えております
とまぁ、素人の考えなんですけどね・・・
勿論、お医者さんに相談するのも大事ですからね
レイジ君の場合
前世の記憶を受け継ぎ
産まれた時から、顎で使えるメイドさんが居れば
歩くのが遅くなるのは当然かと・・・




