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とある貴族の人形遣い (仮)  作者: 涼坂 九羅
1章 転生と人形遣い
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6話 初めての引っ越し 暇つぶし編

 馬車は着々に目的地に移動する

 この世界の公道はまだ整備されていないのだろう

 揺れが凄まじい


「聞いてますか、マスター?

 ですから、お爺さんとお婆さんは末永く幸せに暮らしたのです」


 聞いているけどアリサさん・・・

 暇つぶしが昔話ってどうよコレ?


 まぁ、異世界の昔話は地味に面白かったよ

 でもな、聞いてて飽きないのは連続2作までだわ・・・


 どんな上手に語っても

 見た目は幼児、中身はオタクな俺には耐え切れない

 勘弁してくれ、一応、声、聞こえてますよね?


「はい、聞こえてます

 しかしコレも勉強と我慢して下さい


 コレぐらいは常識の範疇ですので・・・」


 地味に勉強させられてたのか俺・・・

 

「グガーグガー・・・」


 ポチ寝てるし

 何時から寝ていたこの野郎・・・


「それでは次のお話を・・・」


 どんだけレパートリー豊富なんだよ!!

 アレか? 昔話大好きのお婆さんか?!


 俺がウンザリしだした時

 馬車が大きく揺れて、動かなくなった

 瞬間、アリサが俺を守るように抱きかかえ

 ポチが起き上がった


 ポチに至っては武器であるナイフを取り出している


 敵襲か?


 とか、思ったけど

 運転していたメイドさんが馬車のドアを開け入って来た


「もっ、申し訳ありません、車輪が破損してしまいました」


 ポチが外に出て車輪を見て


「あー・・・、こりゃ駄目だ

 直すにしても時間が掛かるぜ、どうするアリサちゃん?」


 敵襲ではないと分かったからだろうか、緊張を解いたアリサが口を開く


「場所は森ですか?

 付近に魔物の気配はありますか?」


「・・・それはアリサちゃんが一番分かってんじゃねーの?

 俺には『魔力探知機能』付いてねぇんだよ」


「そうですね、忘れていました

 少なくとも、この付近には魔物は居ないようです

 人間の気配もありません


 マスター?

 外で休憩しますか?」


 俺は高速で承諾した



 外・・・下界・・・アウトドア・・・

 こんなにも、家の外が素晴らしいと思ったことはなかった・・・


 生前は、出来ることなら引き蘢りたいと思っていたが

 ここ1年とちょっとで、俺は引き蘢りにはなれないと痛感した


 外に出れなくて良かったのは

 転生したことを自覚して、1週間までだった・・・

 それ以降は、外に出たくて出たくて・・・


 それが今、外に居る

 まだ地べたを歩くことは出来ないけれど、土の匂いってこんなにも良い匂いだっけ?

 緑の匂いって前世で嗅いだことあったっけ?


 感動していた

 そう、感動していたのだ

 

 一歳児の考える思考ではない・・・


 俺は、今、アリサさんに抱っこされて森を歩いている

 ポチは馬車の修理に回っている、アイツ、馬車を直す技術があるのだとか


 緑の道は程よく整備されており人が歩ける様になっている

 付近の住人が森へ入る道なのかもしれない


「そんなに楽しいですか、マスター?」


 そりゃあな、初めての外だし・・・


「申し訳ありません

 マスターの身を案じて、家に閉じ込めてしまったのですが・・・


 それも水の泡としてしまいました、本当に申し訳御座いません」


 いや、怒ってないよ、気にするな

 俺の安全を思ってのことだったんだろ?

 じゃあ、仕方ないって・・・

 所でアリサ、この森には動物とか居ないのか?


 アリサは少し考えてから


「居るかもしれませんが、人間を恐れて出て来ないでしょう

 この付近には猟師が住む村がありますから、この道も狩猟用に猟師が整備した道です」


 そうか、残念だな

 ウサギとか狸とか出て来たらいいなぁー、と、思っていたのだが・・・


「マスターは動物が好きなのですか?」


 ああ、大好きな人だ

 特に犬がいいな

 犬は素直で可愛いし


 あっ、でも猫も捨て難いな

 あいつ等の気紛れさもイイ


「本当に好きなのですね」


 生前は好きが講じて

 ワンコのブリーダーさんの元でアルバイトさせてもらった程だ

 結構な重労働で、半年で根を上げたが・・・


 動物の世話は好きだったしな


 その影響か育成ゲームもやり込んだ

 某ポケットなアレは、かなりやり込んだと思う

 全部GETした時の爽快感は今でも忘れない


 あ、

 アリサさんが心配そうな顔してる

 あまり自分の世界に入ると、可哀想な子と思われるな、気をつけよう・・・


ガサ・・・


 茂みが揺れたな

 何か居るのだろうか?


「出て来て下さい、何者ですか?」


「ひぃっ・・・」


 子供の声がする

 まぁ、俺は幼児だけど・・・


 出て来たのは3歳くらいの女の子だった

 ボロボロの古着を身に着けている


 辛うじて女の子と分かる物の、その髪はボサボサで、顔も泥で汚れている為、一見男の子にも見える・・・


「すいません、マスター

 彼女からは魔力を感じなかったもので発見が遅れました、申し訳御座いません」


 さっきから気になっていたがアレか?

『魔力探知機能』ってヤツか?


 聞いた感じ

 付近の魔力を探知する能力っぽいが・・・


「おなか・・・減った・・・」


 女の子はそれだけ言うと膝から崩れ落ちた

 顔は泥だけではない、涙でも汚れて居た・・・


「どうなさいますか、マスター?」


 助けるしかないだろ


「そう言うと存じてました、直に馬車まで運びましょう

 このままでは死んでしまうかもしれませんし・・・」


 アリサは俺を抱っこしたまま、女の子をオンブした



 馬車に戻ると、驚くことに馬車は完全復帰していた

 なんでもポチが頑張ったのだとか


 そんなポチは女の子を見るなり


「なんでぇ、小僧、その歳でナンパか?

 そう言うときは俺様も連れてけっての・・・」


 とか、言ってたな

 近付いて来たメイドさんに、アリサさんは指示を出す


「栄養失調の疑いがあります

 食料の中から消化にいいものを選んで食べさせてあげて下さい


 元気が戻ったら、精のつく物を上げて下さい」


 アリサが女の子をメイドさんに預ける

 メイドさんは分かりましたと言い、草むらにシートを敷き女の子を寝かせ、食料を取りに行った


「おいおい、この娘、なんでこんな怪我してやがんだぁ?」


 女の子を見たポチが怪訝そうな声を出す

 ポチは勝手に女の子を服の袖をまくり肌を露にさせる


 ソコには無数の赤い痣があった・・・


 なんなんだアレは・・・


「マスター・・・おそらくはこの娘、奴隷だと思われます」


 奴隷?

 この世界には奴隷が居るのか!?


「はい、表向きには禁止されていますが

 裏では多くの奴隷が売買されています


 恐らく彼女もその中の一人で、何処からか逃げ出して来た物と思われます

 マスター、どうなさいますか?」


 はぁ?

 なに言ってんだ?

 助けるに決まっているだろう?


「助けるのは当たり前です、しかし、問題はその後です

 彼女を自由にするか、彼女の持ち主に届けるか・・・


 しかし、自由にするのは私は危険だと思います

 この付近には魔物も出没しますし


 何よりマスターの存在を知られました

 持ち主に返すのも無しです


 どうなさいますか?」


 ・・・

 そうだ、助けるだけなら簡単だ、でもその後、俺はこの女の子をどうするつもりなんだ?


 アリサの助言が無くても

 持ち主に返すのは却下だ

 こんな痣を付ける様な場所に返す訳には行かない


 かといってココで自由にすれば

 魔物に喰われて彼女は死ぬ

 それでは無責任すぎないか?


 なら、残された選択肢は1つだけ・・・


 アリサ、馬車は4人乗りだよな?


「連れて行くおつもりですか?」


 ああ、そのつもりだ


「確実に面倒ごとを引き込みますよ?」


 大丈夫だ、安心しろ

 何たってアリサが居るからな、信頼してるぜ


「本当にそれでよろしいのですね?」


 ああ、すまないが頼むアリサ

 せめて近くの街まで連れて行ってやってくれ


「はぁ・・・マスター?

 私に拒否権は無いのですよ?」


 えっ?


「私はマスターの『ドール』です

 助言はさせて頂きますが


 マスターの決定は絶対です

 それは何者にも揺るぎません


 ですから、マスターは只一言『連れて行く』と言えば好いのです

 そうすれば私は命に代えても、彼女を連れて行きましょう」


 

 アリサはまた深々と溜め息を吐くと

 俺をポチとともに馬車に乗っけて、女の子の元に向かった


 ポチがニヤニヤと笑う


「ドール心が分かってねぇーな」


 この縫いぐるみは、本当に何様なのだろう?

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