第十四話 「ようやく会えたのですね。」
――ジャン視点
ジャンは少し離れた場所で、二人の姿を静かに見守っていた。
ヴェルマリスがセレナに引き取られたばかりの頃、ジャンはまだ幼かった彼の世話を任された。食事をきちんと取らせることから、無茶をした後の手当てまで。気づけば十年近く、彼の成長をすぐそばで見てきた。
自由奔放で、目を離せばすぐに走り出し、危険とわかっていても誰かを助けようとする。何度注意しても懲りないところは、今も昔も変わらない。
そんな少年が、眠る前にふと兄たちの話をすることがあった。
どんな顔をしていたのか。どんな声で自分を呼んでいたのか。もう一度会えたら、何を話そうか。
ジャンはそのたび、彼の話を聞いていた。
見つかる保証などない。それでも、探すことをやめられない気持ちを、ジャンは知っていた。
だからこそ、今、ヴェルマリスが兄の腕の中で笑っている姿を見て、胸の奥がじんわりと温かくなった。
よかった。
ようやく会えたのですね。
心の中でそう呟き、ジャンはそっと目を伏せた。安堵を表に出すつもりはなかった。ここで自分まで感傷に浸っていては、二人が気兼ねなく過ごせない。
「……ジャン?」
ふいにヴェルマリスが顔を上げた。
「どうしたの? なんか変な顔してる」
「していませんよ」
「えー、絶対してた」
「気のせいです。それより、久しぶりにお兄さんに会えたんですから、今のうちにたくさん話しておきなさい」
いつもと変わらない口調で答える。
ヴェルマリスは少し不思議そうにジャンを見たものの、すぐに笑顔でリーへ向き直った。
その姿を見届けてから、ジャンは小さく息を吐いた。
これから先、また危険なことが待っているのだろう。ヴェルマリスはきっと、今まで以上に無茶をするに違いない。
それでも今だけは、この再会を喜んでいてほしかった。
長い間、ずっと探し続けていたのだから。
ジャンは何事もなかったかのように姿勢を正し、二人の話が落ち着くのを待った。




