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「忍者? 忍者って、あの忍者のこと? NARUTOみたいな?」

 カケスはオウム返しに畳みかけた。何だその、わくわくする情報は。「NARUTO」は親戚のおじさんの家で、一度全巻一気読みしたことがある。カケスの生まれる前の作品だが、結構面白かった記憶があった。

 思わぬところで糸口を得て、カケスは興奮した。

「でも忍者って、創作だよね? 外国人は忍者が実在すると思っているみたいだけど、映画とかのフィクションだよね。なんで雅ちゃんが知ってるの?」

 ――忍者は実在したよ。正確には「忍者」って呼び方は創作作品で定着しただけで、正しくは「忍び」って呼ばれていたみたいだけど。

 歴史オタクの雅ちゃんは、得意げに言った。電話の向こうでは、さぞドヤ顔していることだろう。

「でも、歴史で習わなかったよ」

 ――中学生じゃあ、そこまで細かく日本史で教えてないのかな? 戦国時代には、結構武将に重宝されていたのよ。実在の忍者だと、服部半蔵とか有名だけど、知らない?

「ああ、受験勉強の時に聞いたことがあるような……。でもマイナーな武将かと思ってた。忍者だったんだ。でも社会の先生、忍者のこと教えてくれなかったなあ」

 ――まあ、忍者って表舞台に出ないから「忍び」だからね~。服部半蔵は縁あって徳川家康に仕えたから、名前が残っているだけで。

「忍者って今でもいるのかな?」

 雅ちゃんは、小さく笑った。

 ――さすがに現代だとリアリティないかな。ほら、武士だって実在したけど、今はいないでしょう? 忍者保存会とかに聞いてみたら末裔みたいな人はいるのかもね。ただ、さっきも言ったとおり忍者は身元を明かさないスパイみたいな存在だから、家系図とかは明らかにしてないんじゃないかなあ。そもそも、忍者って情報伝達が仕事のキモだから、情報が希少だった時代ならともかく、ネットもAIも普及した現代では需要がないんじゃないかな。すでに江戸時代くらいから、仕事がなくて公務員みたいな仕事してたみたいよ。

 そういうことなら、AIに仕事を奪われるリストナンバー1といって過言ではないかもしれない、いや、むしろグーグル先生が生まれたときすでに、商売あがったり案件に成り下がっていた可能性すらある。

「じゃあ、今はいないのか……」

 ―――たぶんね~。忍者保存会の人に聞いてみようか? というか、そもそも忍者保存会ってあるのかな?

 雅ちゃんは適当なことを言った。母がポンコツ認定しただけのことはある。

「ううん。いいや。ちょっと自分で調べてみる」

 そんなポンコツ雅ちゃんが嫌いではないカケスは、これ以上彼女の時間を奪うのも申し訳ないので、一旦引いた。とはいえ、雲を掴むような話ではある。チャットGPTに聞けば雅ちゃんより正確な情報は得られるかもしれないが、雅ちゃんより正確性が高いぶん、秘匿された事実や、都市伝説的噂は聞けないだろう。神保の秘密は、おそらく正規ルートで調べて分かる類いのものではない。

 ―――調べるって、何かに巻き込まれているの? カケスくん

 雅ちゃんが声に「心配」を載っけて、探りを入れてきた。雅ちゃんは優しい。そしてポンコツのくせに、時々妙に勘がいい。

「違うよ。友達と謎解きゲームやってて、それにコーカモノっていうワードが出てきたの」

「なんだ。……って、どんな謎解きなの、それ?」

「あ~。……ん、歴史ミステリー的な? あ、友達が呼んでいるから、もう切るね。ありがとう、雅ちゃん」

――そう? 面白そうな謎解きだね。こんど結末教えてね。

 今度は声に「ワクワク」を載っけて、雅ちゃんは通話を切った。まずい。小さな嘘のせいで、忍者が絡む歴史ミステリー謎解きを考えなくてはいけなくなってしまった。

 カケスは一つ溜息をつき、スマホを鞄にしまった。

 それから思い直し、「忍者は現代にもいますか?」とAIに聞いてみた。案の定、大した答えは出てこない。

 それにしても、神保の秘密は思ったより奥が深そうだ。アンダーグラウンドが関わっているとすると、やはりリンの調査能力を借りたい。なんとかして、直接連絡を取ってみようか。

「あ~あ。絶対ダメだって言うだろうな、母ちゃん」

 歌舞伎パックをつけた母に、頭をはたかれる映像が浮かんだ。

 手を引くことも考えたが、それはできない。DVを受けている神保を助けたいと言った崇高な理由からではない。こんな美味しい謎、解かずに放っておくには、カケスの好奇心は旺盛すぎた。


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