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「もしもし? 雅ちゃん? オレ、カケス」
電話の相手は、カケスからの電話に、驚いた声を出した。
――カケスくん? どうしたの突然。 ひょっとして、お母さんの電話、繋がらなかった?
弁護士の母曰く「善良でポンコツ」の守永雅は、母の法律事務所の事務員で、27歳の歴史オタクである。
「いや、雅ちゃんに用があってかけたの。ちょっと、聞きたいことがあってさ」
――私に? っていうか、よく私の番号知ってたね。
呼吸をするように電話番号を交換するカケスは、当然母の歴代事務員全員の番号を知っている、ちなみに、歴代の中では雅が一番長く母の元で働いている。あの高飛車で破天荒な母の元で2年以上働いているとは、相当我慢強い性格をしていると推察される。
「なんか、昔の時代劇で、針で悪人を殺すやつなかった? 悪党を懲らしめるやつ、なんとか仕掛け人みたいなタイトルの」
――必殺仕事人のこと言ってるの? リメイクのやつしか見たことないけど。
「そうそう。さすが、歴史オタクの雅ちゃん」
――カケスくん、あれ史実関係ないから。フィクションだから。ちなみに針じゃなくて、錐じゃなかったかな。さすがに針じゃ、人は殺せないでしょう。お医者さんとかならできるかもしれないけど。
「え? そうなの?」
カケスは、二重の意味でがっかりした。「必殺仕事人」が史実でないことと、針が武器にならないことだ。
掛川と話しているとき、針を首筋に刺して人を殺す、古い時代劇のシーンが頭に浮かんだのだ。いい線いっていると思ったのだが、残念だ。神保の父も「古くさい因習」と言っていたし、てっきり歴史的な暗黒組織の子孫なのだと思っていた。
まあ「必殺仕事人」が史実だったとして、そんな現代の闇バイトじみた仕事を、神保家が受け継いでいるというのも非現実的だが。
――何、カケスくん。必殺仕事人がどうしたの?
「ううん。いいんだ。忘れて良いよ、雅ちゃん」
カケスがあからさまに落胆した声で言うと、「大丈夫? カケスくん」と雅は心配そうに声をかけてくれた。優しいのだ。
――なんか困ったことがあったら、相談してくれていいよ。
善良だがポンコツの雅ちゃんなので、話したとて解決するとは思えない。お気持ちだけいただいて、カケスは電話を切ることにした。最後に一つだけ、ダメ元で質問する。
「ちなみに、コーカモノって言葉、聞いたことないよね?」
――コーカモノ? 甲賀者? それって、甲賀忍者のこと?
まさかの、雅ちゃんは知っていた。




