ダンジョンボスが俺より主人公してたんだが!?
重そうな扉が開いた。
ギギギ……
ボス部屋。
広い。
暗い。
静か。
ラノベやアニメで見たまんまの、ボスがいそうな部屋だった。
ついに。
異世界らしい展開。
ニャルルが魔導端末を構えながら目を輝かせる。
「撮れ高の予感にゃ」
コメント。
【来た】
【ボス】
【剣聖いけるか?】
俺。
「よし!!」
「異世界での初ボス!!」
「テンプレならここで強敵か美女か宝箱だ!!」
ドカーーン!!
突然の爆発音と煙。
「なに!?」
煙の中央。
3体。
赤。
青。
黄。
全員。
戦隊スーツを着たゴブリンだった。
レッド。
「正義の炎で悪を打つ!! ゴブリンレッド!」
ブルー。
「悲しみの雨はいつか止む!! ゴブリンブルー!」
イエロー。
「君の世界は僕が守る!! ゴブリンイエロー!」
3匹がポーズを取る。
『3人合わせて!』
『迷宮戦隊!!』
『ゴブレンジャー!!!』
沈黙。
俺。
「いや、異世界だよね?」
コメント。
【戦隊!?】
【好き】
【急に世界観変わった】
【テーマソング流せ】
オメちゃん。
「迷宮というか迷走だな」
レッド。
拳を握る。
「悪の秘密結社ども!!」
「お前たちの悪事は、俺たちが許さない!!」
俺。
「え? なんか俺ら悪者になってる!?」
レッド。
叫びながら突進。
「レッド・ストラァァァイクッ!!」
俺。
あっさり避ける。
剣、一閃。
ザン。
レッドの胸を切る。
停止。
レッド。
「……え?」
倒れる。
コメント。
【弱】
【一瞬で退場】
【レッド……】
俺。
「あれ、終わった……?」
その時。
ブルー。
震える。
「兄者ァァァァ!!!」
イエロー。
膝をつく。
「貴様……兄者を……」
コメント。
【剣聖が悪い】
【ゴブリン頑張れ】
【主人公こっち】
俺。
「え?」
「俺悪いの!?」
イエロー。
震える手でポケットから小瓶を取り出す。
虹色の液体。
ブルー。
慌てる。
「待て!!」
「もう限界回数だ!!」
イエロー。
叫ぶ。
「兄者を失うくらいなら!!」
瓶を開けて、レッドに飲ませる。
ゴク。
沈黙。
コメント。
【来るぞ】
【熱い】
【まさか……】
レッド。
指が動く。
目が開く。
立つ。
レッド。
「兄弟……」
ブルー。
「兄者!!」
イエロー。
「戻った……!!」
3匹。
抱き合う。
コメント爆発。
【友情】
【泣いた】
【兄弟愛】
【今日一番の神回】
俺。
剣を下ろして、黙る。
オメちゃん。
「どうした?」
俺。
「……なんか」
「すごく、戦い辛い」
オメちゃん。
「だろうな」
俺。
「なんだよ! あれ! さっきのゴブリンは喋らなかったぞ!」
「『兄者』ってなんだよ」
「ボス部屋でそんな設定入れてくんな!」
コメント。
【剣聖空気読め】
【ゴブリン頑張れ】
【剣聖が負けろ】
俺。
「コメントまで敵側!?」
レッド。
立ち上がる。
拳を挙げる。
「兄弟たち」
「行くぞ!」
3匹。
部屋の奥へ走り去った。
俺。
「逃げた?」
「終わり?」
「終わりで良いよね?」
「もうこの戦いしんどい」
その時。
奥から機械音が響く。
ガシャーン。
ガシャーン。
ガシャーン。
オメちゃん。
「嫌な予感しかしない」
巨大な影が、ゆっくり近づいてくる。
そこにいたのは。
巨大ロボだった。
胸部が開く。
操縦席。
3匹が搭乗している。
レバーを握りながら。
レッド。
「お前らの悪事もここまでだ!!」
ブルー。
「我らの本当の力を見せてやる!!」
イエロー。
「後悔はあの世でするんだな!!」
『超合金合体!!!』
『ゴブキーーーーング!!!』
コメント。
【うぉぉぉ!!】
【主人公こっち】
【熱い展開】
【入場曲欲しい】
俺。
「完全に俺アウェーなんだが!!」
ロボが突撃してくる。
ブルー。
「ゴブリン・キャノン発射!」
レーザー砲がこちらを向く。
俺。
「やばいやばいやばい」
オメちゃんを抱えて逃げる。
レーザーが大きな柱を数本、粉砕した。
レッド。
「これでも食らえ!」
「ゴブリンパーーンチ!!」
ロボットの腕が飛んでくる。
俺。
避ける。
その時。
ドゴォォォ!!
ニャルル。
吹っ飛ぶ。
壁へ激突。
コメント。
【事故】
【大丈夫?】
【直撃じゃね?】
俺。
「ニャルル!!」
駆け寄る。
ニャルル。
普通に立つ。
服の埃を払う。
……
立ち上がったニャルルを見て、俺は固まった。
耳。
片方の耳が……ない。
地面に猫耳が落ちている。
沈黙。
コメント。
【!?】
【耳!?】
【取れた】
俺。
「おい!耳!耳取れてるぞ!!」
ニャルル。
落ちた耳をちらっと見て。
「あー」
俺。
「『あー』じゃない!!」
ニャルル。
「後で拾うにゃ」
俺。
「え!?痛くないの!?」
ニャルル。
「痛くないにゃ」
「整形だからにゃ」
沈黙。
俺。
「…………え?」
ニャルル。
「私、元々人間にゃ」
コメント爆発。
【整形!?】
【突然の暴露】
【知ってた】
【切り抜き確定】
俺は固まった。
視線は胸へ向く。
ニャルルと目が合う。
「もちろんにゃ」
「巨乳の方が伸びるにゃ」
俺。
崩れ落ちる。
「人間なら『にゃ』付けるのやめろォォォ!!」
夢の。
猫耳。
美少女。
獣人。
全部盛り。
嘘だった……
人間だった。
コメント。
【夢壊れた】
【脳破壊】
【登録解除した】
その時。
コメント。
【丸いの投げろ】
ニャルルがニヤリとオメちゃんを見る。
逃げるオメちゃんを掴む。
オメちゃん。
「おい、やめろ!」
「人を投げるのは、やめろォォォ!!」
投擲。
ゴブキング直撃。
停止。
爆発。
3匹。
ロボから放り出される。
倒れるゴブリンたち。
レッド。
「今日はこの辺で勘弁してやる……」
ブルー。
「今度会ったら容赦しない……」
イエロー。
「夜道には気をつけろよ……」
ゴブレンジャー消滅。
静寂。
俺。
「なんか……強いんだか弱いんだか、よくわからんかった」
「ゴブレンジャー……」
「オメちゃん乙」
突然、中央が光る。
巨大な宝箱が出現。
俺の目が輝く。
「来た……」
「念願の異世界報酬イベント……!!」
「レアアイテムか?」
「それとも、聖剣か?」
「はたまた、禁忌の魔法書とか?」
走り寄る。
開ける。
パカ。
中には。
ジジイがいた。
机。
書類。
眼鏡のジジイ。
顔を上げる。
「配信許可証、持ってる?」
俺。
「誰だ、こいつーーーー!!!!」




