剣聖の加護ってそんな扱いなの!?
「俺は宮坂孝一」
森を歩きながら
俺はサッカーボールに向かって言った。
すると。
サッカーボールが
転がりながら答える。
「俺は識別コード Ω7」
「それ名前じゃないだろ!!」
「現在 正式名称は消失している」
「なんだそのSF設定」
「事実だ」
俺は少し考える。
Ω7。
オメガセブン。
なんかカッコいい。
でも。
「長ぇな」
「……」
「オメちゃんでいいか?」
数秒沈黙。
「却下」
「じゃあ、オメちゃんな」
「話を聞け」
「よろしくな オメちゃん」
「……好きにしろ」
よし。
決まった。
「じゃあ俺は?」
「宮坂孝一だろ」
「それだと なんか距離感ある」
俺は少し考えた。
そして。
「こうちゃんで」
「気持ち悪いな」
「なんでだよ!!」
「26歳男性の愛称ではない」
「異世界だからセーフだ!!」
オメちゃんは
少し黙ったあと。
「……まぁ好きにしろ」
「よし!!
これからよろしくな オメちゃん!!」
「よろしくはしたくない」
そんな感じで。
俺たちは街へ向かって歩いていた。
ドラゴンの死体は
そのまま放置である。
大丈夫なのかこの世界。
「で?」
俺は歩きながら聞く。
「これからどうすんだ?」
「まず加護確認だ」
「おっ」
ついに来た。
加護。
チート。
異世界主人公要素。
「やっぱあるんじゃん!!
ステータス!!」
「教会で確認する」
「教会?」
「加護は基本 神殿管理だ」
「おぉ……
なんか異世界っぽい……!!」
テンションが上がる。
ついに俺の能力がわかる。
剣聖か?
勇者か?
それとも隠し職業か?
楽しみすぎる。
「ちなみにオメちゃん」
「なんだ」
「俺 絶対強いよな?」
「…あんまり期待すると、落ち込むぞ」
「なんだよ、それ!!」
「どう考えても、俺の加護はチート級だろ」
木の枝でドラゴン倒せるとか
絶対主人公補正入ってる。
そう思っていた。
この時までは。
・・・
・・・・・・
* * *
しばらく歩くと。
巨大な城壁が見えてきた。
「おぉ……」
異世界の街だ。
石壁。
見張り塔。
大きな門。
煙突から煙が上がっている。
人も多い。
馬車もいる。
完全にファンタジー。
「すげぇぇぇぇ!!」
俺は目を輝かせた。
すると。
突然。
ゴォォォォン……
巨大な鐘の音が鳴り響いた。
「!?」
兵士が叫ぶ。
「転生反応だぁぁぁ!!」
「また来たぞ!!」
「門を開けろ!!」
「急げ急げ!!」
「おぉ〜!
俺って歓迎されてる?」
門を潜ると。
住民たちが
町の中央へ向かって走っていた。
「オメちゃん
みんなどこに向かってるんだ?」
「神殿だよ」
「異世界人の加護確認が始まる」
「加護確認?」
「お前も含めてな」
「おぉ!!」
俺とオメちゃんも
人の流れに乗って
神殿へ向かった。
巨大な神殿の中へ入ると。
中央には巨大な魔法陣。
周囲には大量の住民たち。
ざわざわ。
ざわざわ。
熱気がすごい。
「すげぇ……異世界の神殿だ……」
俺は感動していた。
だが。
住民たちの視線は
完全に俺たちへ集中している。
「今回の転生者は?」
「男2 女1だな」
「頼む……当たり来い……」
「生活改善系……」
「食料生成系でもいい……」
怖い。
なんか目がガチだ。
その時。
神官らしき老人が
杖を持って現れた。
白いローブ。
長い髭。
完全にファンタジー。
「これより
転生者の加護確認を行います」
キタァァァ!!
ついに。
俺のチート能力が判明する。
剣聖か?
勇者か?
大賢者か?
ワクワクが止まらない。
「では最初の者」
神官がこちらを見る。
「前へ」
「おっ」
俺は胸を張って前へ出た。
後ろでオメちゃんが呟く。
「死ぬほど嬉しそうだな」
「当たり前だろ!!
異世界転生のメインイベントだぞ!!」
俺は魔法陣の中央へ立つ。
すると。
足元が光った。
ブォォォォ……
空中へ文字が浮かび上がる。
《加護解析中》
住民たちがざわつく。
「戦闘系か?」
「生産系来い……」
「農業系頼む……」
俺は拳を握る。
来い。
超チート。
主人公能力。
そして。
空中へ文字が現れた。
《加護》
《剣聖》
「キタァァァァァァァ!!!!」
俺は絶叫した。
「剣聖!!
剣聖だァァァァ!!」
やっぱり!!
やっぱ主人公!!
最強!!
ロマン!!
「ありがとう異世界!!」
だが。
住民たちの反応は違った。
「……チッ」
「また戦闘系かよ」
「ハズレ寄りだな」
「最近多いんだよなぁ」
「使えね加護に喜びやがって」
「…………」
「え?」
俺は固まる。
いやいやいや。
剣聖だぞ?
超カッコいいじゃん。
なんでガッカリしてんの?
神官も微妙な顔だった。
「まぁ……悪くはありませんな」
「テンション低!!」
すると。
神殿の壁に
巨大なランク表が浮かび上がった。
《加護危険度ランク》
SSS
《文明崩壊級》
即封印
SS
《国家滅亡級》
監視対象
S
《都市破壊級》
許可制
C
《剣聖》
「剣聖弱くね!?」
俺は叫んだ。
「いや待て!!剣聖だぞ!?」
オメちゃんが
淡々と答える。
「強いには強い」
「ならなんで!!」
「最近は災害系が増えた」
「インフレやめろ!!」
広場の隅。
体育座りしてる男がいた。
ボロボロのマント。
死んだ目。
「俺……
5系統も使える魔法使いなのに……」
哀愁がすごい。
夢がない。
「次の者」
神官が呼ぶ。
前へ出たのは
銀髪の少女だった。
ヨレヨレの服。
少し怯えた顔。
めちゃくちゃ美少女なのに
雰囲気が弱々しい。
「が……頑張ります……」
住民たちがざわつく。
「女の子だ!!」
「頼む!!
生活改善系!!」
「食料!!
食料頼む!!」
少女が魔法陣へ立つ。
光。
空中文字。
《ユニーク加護解析中》
住民たちが息を呑む。
「ユニークだ!!」
「当たりか!?」
「頼むぞ……!!」
そして。
表示された。
《加護》
《無限おにぎり生成》
沈黙。
数秒後。
住民たち立ち上がって歓喜した。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
「神加護来たぁぁぁぁぁ!!」
「食料革命だぁぁぁ!!」
「冬が越せる!!」
「飢饉が終わるぞ!!」
少女が困惑する。
「え?」
「わ……私……
剣とか魔法じゃなくて?」
神官が号泣していた。
「SS級生活保証加護……!!」
「救世主ですぞぉぉぉ!!」
「剣聖など比較になりません!!」
「えぇぇぇぇぇ!?」
俺は叫ぶ。
「剣聖の扱い終わってんなこの世界!!」
少女は完全に混乱していた。
「お……おにぎりの加護?」
「白米の女神だ……」
「米は正義……」
住民たちが
拝み始める。
そして。
最後の男が前へ出る。
黒髪。
片目を隠した長髪。
黒コート。
完全に強キャラ。
俺はワクワクした。
「来た……絶対強キャラだ」
男はニヤリと笑う。
「凡人ども……俺の力に震えろ」
うわぁ。
めっちゃ強キャラ。
絶対当たりだ。
魔法陣が光る。
《加護解析中》
住民たちが緊張する。
そして。
表示。
《加護》
《天災召喚》
「おぉ!?」
俺はテンションが上がる。
さらに文字。
《隕星落下》
沈黙。
ランク表が赤く点滅した。
SSS
《文明崩壊級》
住民たち。
「…………」
「うわ」
「最悪だ」
「災害級の加護だ」
「まじかぁ……」
俺は叫ぶ。
「いや待て待て!!
隕石とか超すごいだろ!!
それこそチート級じゃねぇか!」
オメちゃんが
呆れた声を出す。
「お前、まだこの世界のことわかってねぇな」
「フッ……
ようやく俺の時代が来た――」
片目を隠した男が
髪をかき上げて言った。
ガコン。
突然。
神殿の奥の壁が開いた。
中から。
鎖付きの巨大魔導兵が飛び出す。
「文明崩壊級認定」
「対象を封印します」
男
「え?」
俺
「えぇぇぇぇ!?」
住民たちは慣れていた。
「あー……災害系マジいらね」
「この前、王都3つ消したヤツいるしな」
「保険料上がるんだよなぁ」
男は拘束されながら叫ぶ。
「待て!!
俺は俺TUEEEEしたいだけなんだぞ!!」
「対象を捕獲」
「嫌だ!!
異世界来たんだぞ俺!!」
ズルズル引きずられていく。
そして最後に絶叫した。
「なんだこの世界はァァァァァ!!!」
その後ろ姿を見ながら。
オメちゃんが
ボソッと呟く。
「たぶんあいつ
これから個室で尋問だな」
「え?」
「1日3回面談で精神状態確認されるんだよ」
「なにそれ?怖っ!」
オメちゃんは
淡々と続ける。
「『現在 精神状態は安定していますか?』」
「『隕石を落としたい衝動はありますか?』」
「なんだその危険人物カウンセリング!?」
オメちゃんは
転がりながら言った。
「文明崩壊級だからな」
・・・夢も希望もない世界だった。




