勇者が超絶イケメンになってるんだが!?
街を出て数時間。
俺達は森の中を進んでいた。
目的地は隣町。
どうやらそこに、魔王の手掛かりを持つ人物がいるらしい。
とはいえ。
道中は平和だった。
魔物も出ない。
盗賊も出ない。
イベントも無い。
俺。
「なんか魔物に全然会わないな」
ニャルル。
「雑魚は撮れ高無いから、出会わなくていいにゃ」
俺。
「お前、配信脳すぎるだろ」
と、その時。
ヒヒーン!!
ヒヒヒーン!!
ヒフン!!
ヒフヒフン!!
俺。
「なんかペガサスとユニコーン、うるさくない?」
オメちゃん。
「マウントの取り合いをしてるな」
俺。
「え!?」
「言葉わかるの?」
オメちゃん。
「そういう仕様だからな」
俺。
「便利な仕様だな」
オメちゃん。
「翻訳する」
* * *
ペガサス。
「おい!お前!」
「ここは、お前のような田舎者が来るところじゃないんだよ!」
ユニコーン。
「ふっ」
「ニワトリ崩れの馬もどきが、騒がしいな」
「私は由緒あるディンゴディンゴ家の次期当主」
「ユニぴょん様だぞ」
ペガサス。
「はぁ!?」
「我を誰だと思っている!」
「名門ベロンベロン学院主席卒業!」
「空の貴公子!」
「ペロンティ様だぞ!!」
俺。
「ユニぴょんと、ペロンティって言うんだ……」
オメちゃん。
「そうらしいな」
ユニぴょん。
「変な名前だな」
ペロンティ。
「ユニぴょんに言われたくないわ!!」
俺。
「どっちもどっちだな」
* * *
その直後。
木々が激しく揺れた。
バキバキバキッ!!
翔太。
「魔物か!?」
ブルブル震えて、逃げ腰になる翔太。
俺。
「お前……」
「まさか魔物と戦うの、初か?」
と、その時。
森の奥から現れたのは。
巨大なトカゲ。
そして。
その上に乗るトカゲ人。
大盾。
大槍。
完全武装で、こちらへ突進してくる。
翔太。
「え!?え?!」
「トカゲにトカゲが乗って!?」
「え!?」
パニクる翔太。
トカゲにトカゲ……
トカゲ&トカゲ。
いや、トカゲパフェと名付けよう。
俺たちは剣を構えた。
俺。
「来るぞ!」
ニャルル。
「絵面が微妙にゃ」
「絵にならないから早く倒すにゃ」
* * *
俺の腕が光る。
ドラゴンを真っ二つにした時の、あの感覚。
全身に力が漲る。
俺。
「来い!」
トカゲパフェ(上)が槍を構えた。
次の瞬間。
地面を蹴る。
ドンッ!!
自分でも驚くほど体が軽い。
景色が流れる。
一瞬でトカゲパフェとの距離を詰めた。
俺。
(速っ!?)
トカゲパフェ(上)も驚いたように目を見開く。
だが。
さすがに戦士だ。
すぐに大盾を構えた。
ガギィィン!!
俺の剣と盾が激突する。
凄まじい衝撃。
腕が痺れる。
俺。
「かってぇ!!」
トカゲパフェ(上)(下)。
「ギャッギャッ!!」
「ギッギッ!!」
何言ってるか分からない。
でも。
馬鹿にされた気がした。
俺。
「なんかムカつく!」
再び斬りかかる。
右。
左。
上段。
連続攻撃。
ガガガガガガッ!!
だが。
全部盾で防がれる。
俺。
(おかしい!)
(剣聖って最強じゃないの!?)
トカゲパフェ(上)が槍を突き出した。
速い。
反射的に体が動く。
ヒュン!!
紙一重で回避。
俺。
「うおっ!?」
槍が鼻先を掠める。
冷や汗が流れた。
トカゲパフェ(上)。
「ギャハハハ!」
今のは完全に笑われた。
俺。
「くっそ!」
(だったら必殺技だ!!)
俺の腕がさらに輝く。
何度も何度も考えた。
最高にカッコいい技名。
今こそ使う時。
俺。
「神技!!」
「エンド・オブ・ストラッーーシュ!!」
光の刃が飛ぶ。
トカゲパフェ(上)へ直撃。
・・・
トカゲパフェ(上)。
鎧を見る。
少し傷。
トカゲパフェ(上)。
「・・・」
俺。
「・・・」
トカゲパフェ(上)(下)。
「ギャッ」
「ギャギャッ」
俺。
「ちょっとしか効いてねぇぇぇ!!」
翔太。
前へ出る。
「どけ!」
「ポンコツ剣士!」
「俺様に任せろ!」
杖を掲げる。
詠唱を始める翔太。
「悠久より、力を蓄えし、深淵に宿る、古の炎よ」
「我が魔力を食い尽くし」
「今こそ真の姿を現せたまえ」
俺。
「長いな」
翔太。
「神の力をも凌ぐ、我が身に宿りし根原に問う」
「幾千もの時を超えて……」
俺。
「長い」
翔太。
「忘れ去られた、力が集まりし時……」
俺。
「長い長い長い!!」
「どんだけ長いんだよ!」
「早くファイヤーボール打てよ!」
翔太。
「うるせー!!」
「俺は詠唱が長いほど、威力が増すシステムなんだよ!!」
俺。
「なんだよその面倒くさい設定は!!」
* * *
俺と翔太が言い争っている間。
ザン。
ザザン。
ザザザザザン。
妙な音が聞こえた。
俺。
「ん?」
翔太。
「ん?」
振り返る。
トカゲパフェに、いくつもの切り跡。
ズル。
上半身が落ちる。
ズルズル。
さらに細かく。
完全なるみじん切り。
俺。
「・・・」
翔太。
「・・・」
ニャルル。
「トカゲ倒したにゃ」
そこに立っていた。
大剣を持つ男。
超絶イケメン。
銀髪。
長身。
完全に主人公。
俺。
「誰?」
翔太。
「誰?」
ニャルル。
「誰にゃ?」
男。
「わしじゃ、源蔵じゃ」
全員。
「なんだとぉぉぉ!!??」
* * *
源さんだった。
勇者の加護を受けた影響で。
72歳から28歳へ若返っていた。
俺。
「加護の説明してくれ!」
「そこ重要だから!!」
源さん。
「聞かれんかったしのぉ」
ニャルル。
「イケメンになってるにゃ」
ピコリ。
「・・・」
ポケットから櫛を取り出し、黙って髪を整える。
俺。
「お前なんで髪整えてるの?」
ピコリ。
「整えてないわよ!」
整えていた。
* * *
源さん。
剣を肩に担ぐ。
「最近の若いもんは戦闘中によく喋るのぉ」
俺。
「源さん強っ!!」
源さん。
「昔は傭兵やっとったからのぉ」
全員。
「初耳だよ!!」
* * *
こうして。
チート勇者。
剣聖(普通)。
配信者中毒。
大魔導師(???)。
婚活おにぎり女。
毒舌治癒師。
喋るサッカーボール。
学歴マウントのペガサス。
家柄マウントのユニコーン。
問題児だらけのパーティーは。
初戦闘を終えた。
俺は気づいてしまった。
この中で一番まともなのが。
実は源さんだったことを。




