密室の仕事場
資料室は想像以上に狭かった。
四畳半ほどの空間に机と棚がぎっしり詰まっている。
埃っぽい空気の中で咳払いをする。
「明日からはここが私の職場か」
感慨深げにつぶやくと棚の奥に飾られた写真立てを見つけた。
誰の写真だろか?それにしても綺麗な人だな。少し青味がかったロングの黒髪だ。
よく見るとなんとなく柚希に似ている…。
「ダメだ!」
声に出して自制する。ここで折れたら全てが水泡に帰すだろう。
「仕事だ……仕事……」
自分に言い聞かせながら椅子に座った。
PCの電源を入れようとした瞬間教室棟の方から賑やかな声が聞こえてきた。始業時間が近いのだろう。
ポケットの中で携帯が振動する。メールの通知を確認すると真実からだった。
『お仕事決まりましたか? 詳しく聞きたいです』
胸が締め付けられる思いだった。
真実にも柚希にも嘘をついてばかりだと反省する。
正直になるべきタイミングではないか—そう思い立ち返信を打ち始める。
『実は明日から学校事務員として働くことになった』
一旦指が止まり、続けてこう打つ。
『ただし重大な問題があって—』
そこで文章を削除した。今さら罪を告白して何になる? よりによって柚希本人の関係先で知られたら社会的生命も危うくなる。
結局シンプルにこう返信した。
『仕事が決まった。詳細は後日話す』
送信ボタンを押した直後なぜか後悔の念が押し寄せる。
真実だけには本音を打ち明けるべきだったのではないだろうか?




