禁忌の記憶
通学路を歩きながらヨシオは昨夜の出来事を思い返していた。
あの瞬間の高揚感とその後の恐怖感の入り交じった感覚が蘇る。
まるで麻薬のような中毒性を持つ行為に手を出してしまった自覚があった。
「なんでこんなことになっちまったんだ……」
独り言を漏らしながらも足取りは意外なほど軽快だった。
仕事を見つけるという目標が定まったことで心に余裕が生まれたせいかもしれない。
校門前で待っていると柚希が追いついてきた。
「早いのね」
「慣れてるからな」
ヨシオは平静を装った。
「ところで君の下着……」
言いかけた瞬間柚希の顔色が変わったので慌てて言葉を飲み込む。
「何でもない」
「だったらいいけど」
柚希は怪訝な表情を浮かべつつもそれ以上追及はしなかった。
「行こうか」
二人は黙々と歩いて職員室に向かった。そこには既に人事担当者が待っていた。
「春野さんですね?」
中年の女性が笑顔で出迎える。
「書類はこちらで受理済みです。では契約内容をご説明します」
説明によれば月額十四万円程度の収入になる計算だった。安いといえば安くもあるが今のヨシオにとっては十分以上の報酬だった。
「こちらにサインをお願いします」
書類を渡されペンを走らせる。署名欄に「春野ヨシオ」と記入している途中指先が震えた。
「大丈夫ですか?」
人事担当者が心配そうに尋ねる。
「大丈夫です」
ヨシオは努めて平静に答えた。
「ところで私のデスクはどこになりますか?」
「第三資料室です」
彼女はさらっと答えた。
「古い教材などが保管されている場所なので清掃も兼ねてお願いしたいのです」




