侮蔑の視線
その晩柚希の家で過ごす最後の夜。
食卓に座っているものの会話はほとんどなかった。
母親の心配そうな視線を感じながらも何も言い出せない。
「お話があります」
突然柚希が口を開いた。
全員の注目を集めて続ける。
「叔父さんは明日から仕事に行きます。でも私は一緒に暮らすつもりはありません」
「どういう意味だ?」
ヨシオは困惑した。
「家賃払ってもらうわ」
柚希は淡々と述べた。
「もちろん給料に見合う額だけど今まで通りタダで住むなんておかしいでしょ?」
母親は微妙な表情を浮かべたが何も言わなかった。
ヨシオは苦虫を噛み潰したような顔をして「それで構わない」と言った。
柚希は続けた。
「それにこれからは"叔父さん"じゃなくて"春野さん"って呼びますから覚えておいてね」
完全な疎外宣言だった。
ヨシオは胸が締め付けられる思いだったがこれ以上言い訳もできない。
「わかった」
彼は力なく頷いた。
「迷惑をかけることはないよう気をつけるよ」
「お願いします」
柚希の声には以前のような親愛の情は感じられなかった。
「じゃあ食事済ませましょうか」
夕食後部屋に戻ったヨシオは荷造りを始めた。
わずかな私物を鞄に詰めながら改めて自分の愚かさを悔いた。
しかし後悔していても始まらない—これは人生の分岐点なのだ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
更新の活力になりますので、 面白い・続きが気になると思っていただけましたら★★★★★から評価やブックマーク等していただけますと大変助かります。よろしくお願い致します!




