歪んだ欲望
日曜日の夕方
マンションの廊下を歩く足取りは軽やかだった。
この三日間はまさに嵐のような日々だった。
母親が柚希の学校に連絡を入れてくれたおかげで面接の機会を得ることができた。
採用されるかどうかはわからないが、ともかく希望の光が差し込んだことは間違いない。
「久しぶりだな……」
ヨシオは久しぶりに真新しい白のTシャツを着て柚希の住むマンションへ向かった。ド
アベルを押す手が震える。
ドアを開けると柚希の母親が温かな笑顔で迎えてくれた。
その背後には少し拗ねた様子の柚希が立っている。
「お邪魔します」
玄関に入る瞬間目に飛び込んできたのは壁に貼られた大量のポスターや賞状。中でも目立つのは国際化学オリンピック銅メダリストという文字だった。
「すごいじゃないか」
思わず口に出すと柚希は照れたように頭を掻いた。
「まぁね」
居間で母親からの温かいもてなしを受けながらヨシオは複雑な心境だった。
ここに滞在させてもらう資格なんて自分にはあるのか?
「そんなこと気にしないで」
まるで心を読まれたかのように柚希の母が言った。
「あなたは私たち家族なんだから」
その言葉に胸が熱くなる。涙腺が緩みそうなのを必死で堪えた。
「ありがとうございます」
ヨシオは頭を下げた。「色々とお世話になります」
「柚希があなたのために部屋を用意してくれたのよ」
リビングに通されるとテーブルには豪華な料理が並んでいた。
久しく口にしていない家庭料理の匂いに胃袋が疼く。
「お腹空いてるでしょ?」
母親が気遣うように言った。
「ええ……とても」
ヨシオは素直に答えた。
食事が終わると柚希は「少し片づけてくる」と言って別室へ向かった。
母親も「明日の準備があるから」と寝室に入っていった。
ひとりになったヨシオは浴室に向かうふりをして階段を上がった。
柚希の部屋の前に立つと奇妙な興奮を覚える。
幼い頃は毎週のように訪れていたこの家が今は全く別の空間に思えた。
「何をしてるんだろう……」
自問しながらもノブを回してしまう。
鍵がかかっていないことに胸が高鳴った。
部屋に入ると独特の芳香が鼻孔を刺激する。
香水でも使っているのだろうか。
洋服タンスの引き出しが少し開いていた。
好奇心が勝り手を伸ばすと中に淡いブルーの下着が見える。考える前に手に取ってしまっていた。
「綺麗だ……」
レース模様の美しいブラジャーを広げて観察する。
子供時代の可愛らしい印象とはまったく違う大人っぽいデザイン。
同時に股間が疼く感覚に戸惑った。
「いけないことだとわかってるのに……」
禁断の誘惑に抗えず鼻先を近づけてしまう。
微かに残る体臭のような香りが脳を痺れさせた。
右手が下半身へと伸びかけて我に返る。
「最低だ……」
震える手で下着を元に戻した瞬間ドアノブが回った。
慌てて窓際の椅子に座る振りをする。
「あれ?どうしたのおじさん?」
入ってきた柚希が不思議そうに尋ねた。
「ああ……景色を見てたんだ」
ヨシオは汗ばんだ手を膝上で握りしめた。
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