不確かな現実
翌朝、雨は小降りになっていた。
ヨシオは濡れたジャージの袖で顔を拭いながら立ち上がった。
関節が痛む。昨夜の睡眠不足が祟っているようだ。
公園の公衆トイレで顔を洗おうとした時、鏡に映る自分の姿に愕然とした。
赤く腫れた目元。青白い肌。そして何より眼差しに宿る諦念が明らかだった。
「これじゃ誰も雇わないだろうな……」
自嘲気味に呟きながら蛇口を捻った。
冷たい水が思考をクリアにする。
スマホを取り出し時刻を確認すると午前十時。
ハローワークの開庁時間は過ぎている。
申請の義務を果たしていない以上、生活保護の話は進まない。
「行くか……」
ヨシオは溜め息と共に決めた。
拒否されるのがわかっていても形だけでも示さねばならない。
ハローワークは想像以上に混雑していた。
若者から高齢者まで様々な人々が長蛇の列を作る。
ヨシオはその最後尾に並びながら周囲を観察した。
皆一様に疲弊した表情をしているが、それでも前を向いている。
その健気さが痛々しい。
順番が来て窓口で簡単な登録を済ませると、「次回の相談日は一週間後です」と告げられた。
その間に求人情報を調べておくよう促されるが、到底不可能な状況だった。
帰り道、ヨシオはある自販機の前で足を止めた。
缶コーヒー一本買う金すらない現実。
一瞬盗もうかという衝動に駆られるが、寸前で踏みとどまった。
「堕ちるところまで堕ちたくない……」
そう自分に言い聞かせながら歩いていくうちに、昨日真実と歩いた川沿いのコースに出た。
自然と足が早くなる。ここで捕まれば全てが終わる。




