## 心の距離 ### 第八章 枕元の秘密
深夜......
リビングで毛布に包まりながらヨシオは目を閉じていた。
柚希と凛太郎はそれぞれの部屋に引き上げた
が
心地よい疲れが全身を覆っていた時、
「コン、コンッ」っと唐突にノックの音がした。
「叔父さん起きている?」
柚希の声がした。ヨシオは身を起こした。
「何だ?」
ドアがゆっくりと開き、
パジャマ姿の柚希が立っていた。手には枕を持っている。
「一緒に寝ない?」
彼女は囁くように言った。
「私の部屋で」
ヨシオは完全に混乱した。
「何を言ってるんだ?」
「ベッド大きいから二人で寝ても大丈夫よ」
柚希は平然とした顔で言った。
「それに……話しもしたいし」
「でも……」
「パパとママは出張中でいないわ」
柚希の目が真剣になった。
「今夜だけは誰も見ていない」
ヨシオは逡巡した。
十六歳の姪と一緒のベッドに横たわるなど、常識的に考えればあり得ない。
しかし今日一日の出来事で、
彼女らの間に何か変化が起きていることも感じていた。
「分かった」
ヨシオは立ち上がった。
「でも変なことしようなんて思ってないぞ」
「当然でしょ」
柚希は微かに笑った。
「ただの愚痴聞き相手よ」
彼女の部屋は意外なほどシンプルだった。
ピンクの壁紙と白い家具。
机の上には英語とフランス語の参考書が積まれている。
ベッドの脇の棚には幼い頃の家族写真が飾られていた。
柚希はサイドテーブルのライトを点け、ベッドの片側に潜り込んだ。
「こっち来て」
ヨシオは躊躇いながらもベッドの端に腰掛けた。
想像以上に広いダブルベッド。
それでも十六歳の女の子のベッドに横たわるのは気が引けた。
「電気暗くする?」
柚希が訊いた。
「そうだな、少し……眩しいかな......」
「じゃあ、暗くするね」
彼女は枕を調整しながら言った。
「私眠れなくなると夜通し勉強しちゃうんだよね」
二人は暫く沈黙した。
柚希からは香水のような甘い香りが漂ってくる。
ヨシオは落ち着かない気分で視線を彷徨わせた。
「ねぇ」
柚希が突然切り出した。
「昔のこと覚えてる?私が小学校四年生の時」
「ああ……」
ヨシオは記憶を探った。
「君が転校初日に泣いて帰ってきた日だな」
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