残酷な現実
「春野さん、48歳ですね」
窓口担当の女性職員がファイルを捲りながら言った。「現在のご状況は?」
ヨシオは簡潔に経緯を説明した。
失業後の転落過程とホームレス生活。事故による一時的障害を乗り越えてきたことまで。
職員はメモを取りながら聞き入っていたが、途中でペンを止めた。
「率直に申し上げますが」
彼女の声が一段低くなる。「48歳で健康な男性となると……生活保護の審査は非常に厳しいです」
ヨシオは喉が乾くのを感じた。
「どういうことでしょうか?」
「仕事を見つけられる可能性が高いと判断されますから」
職員の表情に同情は見られない。
ただ冷静に規定を伝えているだけだ。「まずはハローワークでの就職活動証明が必要になります」
「でも……」
ヨシオは言葉に詰まる。「やっぱり前科が…?」
「それは関係ないです」
彼女は即座に答えた。「現時点での能力と意欲が重要視されます」
つまり、条件付きで門前払いということだ。希望が急速に萎んでいくのを感じた。
「申請は……できますか?」
ヨシオはかろうじて声を絞り出した。
「はい」
職員は頷いた。「ただし審査には時間がかかります。それまでご自分で凌げる環境はありますか?」
「ありません」
正直に答えた。真実の家に戻れるはずもない。
職員は深いため息をついた。
「春野さん……厳しいことを言いますが」
彼女は椅子を引いて少し前のめりになった。
「48歳で健康ならば仕事はあります。生活保護は最終手段です」
その一言が鋭利なナイフのように胸に突き刺さった。
否定されたわけではない。ただ現実を突きつけられただけだ。それでも屈辱感が全身を支配する―




