## 零細生活者の生態 ### 第二十四章 惜別の刻
「それでも……」
柚希が再び口を開く。
「一緒にいたいって思うことがいけないことなの?」
「ああ」ヨシオは断言した。
「間違いだ」
「ヨシオさん」
紗月が一歩前に出た。
「私たちが信じられるのはあなただけなんです。でもそれを否定しないでください」
「無理だ」
ヨシオは首を振った。
「もう決めたことだ。これでおしまいにしよう」
重い空気が流れる中、突然花音が動いた。
彼女は財布から一万円札を取り出し、ヨシオの手に押し付けた。
「受け取ってください」
彼女の声は思いがけず優しかった。
「迷惑料です」
「バカ言うな」ヨシオは拒んだ。
「お願いします」
花音が懇願する。
「この先どうするか決められないなら……せめて今日だけは安全な場所で休んでください」
「花音……」
「ホテル代や食費に使って」
彼女は紙幣をヨシオのポケットに押し込んだ。
「そして明日からは一人で考えてください」
柚希と紗月もそれぞれの財布からお金を出し始めた。
「やめろ!」
ヨシオが手を払う。
「こんなことされて嬉しいわけないだろ!」
「でも他に方法がない」
柚希が真剣な眼差しで見つめる。
「私たちには何もできないけれど……これくらいはさせて」
ヨシオは三人を見渡した。
涙を堪える柚希。
決意に満ちた花音。
不安そうな紗月。
全員が彼のために何かを犠牲にしようとしている―




