## 零細生活者の生態 ### 第二十章 交錯する軌跡②
谷岡は目を丸くした。
「お嬢ちゃん?誰だ?」
「ヨシオさんの姪です」
柚希の声は凛としていた。
「失礼な態度はやめてください」
「姪?」
谷岡は嘲るように笑った。
「ホームレスの親戚ってか?こりゃあ面白い」
「彼はホームレスじゃない」
柚希の目に涙が溜まっていた。
「ただ少し生活に困っているだけよ」
「困ってるどころか破産寸前だろ?」
谷岡の嘲笑が続く。
「俺みたいに上手く立ち回れば……」
「あなたこそ」
柚希が声を張り上げた。
「お金はあるかもしれないけど心は貧しいわ」
「なんだと?」
谷岡の顔が歪む。
「ゴマすりで地位を築いただけ」
柚希の視線は鋭い。
「本当の価値はどこにあるか理解していない」
コンビニ店内が静まり返った。
花音と紗月は息を呑んで見守っている。
「小娘が偉そうに」
谷岡の顔が赤く染まる。
「社会に出たこともない奴に何が分かる!」
「社会のことなら知っているわ」
柚希は一歩も引かない。
「あなたよりずっと正直に生きている人がいるってことを」
ヨシオは立ち上がり、柚希の肩に手を置いた。
「もういい」
「放して」
柚希が拒む。
「こんな人に負けたくない」
谷岡は鼻で笑い、
「好きにしろ」
と言い捨てて立ち去った。
退店時にヨシオを一瞥し、
「落ちぶれたもんだ」と囁いて。
ドアが閉まると同時に柚希が崩れ落ちた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
嗚咽が床に落ちる。
「また迷惑かけて……」
ヨシオは少女を抱き寄せた。
「謝るな。俺のために怒ってくれたんだろう?」
「違う」
柚希の顔がヨシオの胸に埋まる。
「私が弱いから……叔父さんを…ヨシオさんを守れないから……」
「十分守ってもらってるさ」
ヨシオの声は優しかった。
「だからもう泣くな」
花音と紗月がそっと近づいてきた。
「お店の迷惑になります」
花音が静かに言った。
「外に出ましょう」
三人で柚希を支えながらコンビニを出る。
夜風が頬を撫でる中、ヨシオは決意を新たにした。
どんな形であれ—この子たちを守る責任があると。




