## 零細生活者の生態 ### 第二十章 交錯する軌跡③
コンビニを出た四人は無言のまま橋の方向へ歩き出した。
柚希はヨシオのシャツの裾を掴んだまま、小さな肩を震わせている。
「あの男の言うことは気にするな」
ヨシオが柚希の頭をそっと撫でた。
「谷岡は……俺よりも才能がないから妬んでるだけだ」
「でも……」
柚希が顔を上げる。
「あんな風に言われて悔しかった」
「その気持ちが嬉しいよ」
は素直に答えた。
「でも今夜はもう遅い。家に帰って……」
「帰らない」
柚希が強く否定した。
「ヨシオさんがいるところに私もいる」
「ダメだ」
ヨシオは厳しい口調で言った。
「君は高校生だ。保護者も心配している」
「じゃあ私が保護者になれば?」
花音が割り込んだ。
「明日から夏休みですし」
「そういう問題じゃない」
ヨシオが反論する。
紗月が柚希の肩に手を置いた。
「柚希さん……叔父さんの気持ちも考えてあげて」
「わかってる」
柚希は俯いた。
「でも今日は一人になりたくない」
夜風が冷たく吹き抜ける中、
ヨシオは深いため息をついた。
三人の少女の視線が集中する。
「……わかった」
彼はついに折れた。
「ただし条件がある」
「何?」
三人の声が重なった。
「今夜だけだ」
ヨシオの目が真剣になる。
「そして俺は外で見張りをする。君たち女性陣はテントを使ってくれ」
花音と紗月が驚いた顔で見合う。
「叔父さん……本気ですか?」
「ああ」ヨシオは静かに答えた。
「お前たちが危険な目に遭わないように」
柚希の目に涙が光った。
「ありがとう……」
橋の下の仮設テントに到着すると、
ヨシオは素早く寝具を準備した。




