## 零細生活者の生態 ### 第十九章 食卓の攻防②
「すみません」
紗月が赤面する。
「不器用で……」
ヨシオが箸を拾い上げた瞬間、紗月の手が偶然彼の指に触れた。
「あ……」
思わず手を引っ込める紗月。
頬が桜色に染まっている。
「まったく」花音はため息をついた。
「小学生みたいな反応ね」
「違います!」
紗月の声が上ずる。
花音はチョコレートの箱を手に取り、
「仕方ないわね」と言いながらヨシオの方へ向けた。
「口を開けて」
「何をする気だ?」
ヨシオは警戒した。
「いいから」花音は有無を言わさず、
「はい、あーん」と言う。
ヨシオがためらっていると、
チョコが無理やり唇に押し当てられた。
「美味しいでしょう?」
花音の目が勝ち誇ったように輝く。
紗月は呆然と見つめていたが、
「私も!」と突然声を上げた。
「叔父さん、私のカップ麺も食べてみてください!」
彼女は勢いよくヨシオの口元に麺を運ぼうとするが—
「熱っ!」自分自身の舌を火傷させた。
「大丈夫か?」ヨシオが慌てて立ち上がる。
「平気です……」
紗月は涙目で微笑んだ。
「でも……もう一度だけ……」
「ダメよ」
花音が割って入る。
「不公平じゃない」
ヨシオは二人の少女の間で板挟みになりながら苦笑した。
「落ち着け」
「落ち着いてるわよ」
花音は毅然と言い放った。
「ただあなたが魅力的なのは認めるけど」
「私もそう思います」
紗月は素直に同意した。
「だからこそ……」
その時、ヨシオの携帯が再び鳴った。
表示はまたしても非通知だ。
二人の視線が集中する中、ヨシオは渋々電話に出た。
「もしもし」
「ヨシオさん?」
柚希の声だ。
「どこにいるの?」
ヨシオの表情が硬くなる。
「言えない」
とヨシオが言いかけた瞬間—




