34/109
## 零細生活者の生態 ### 第十八章 100円の奇跡②
「勉強道具を買いに」
紗月は率直に答えた。
「テスト前だから」
その時ヨシオの携帯電話が鳴った。
画面を見ると番号表示は無い。
「出ないんですか?」
紗月が尋ねた。
「知らない番号だから」
ヨシオはためらいがちに答えた。
電話は鳴り続ける。
ついにヨシオは通話ボタンを押した。
「もしもし」
沈黙の後、
「やっぱり叔父さんね」
と柚希の声が聞こえた。
ヨシオの顔が強張る。
「柚希……」
「そこにいるの?」
柚希の声には焦りがあった。
「今すぐ迎えに行くわ」
「ダメだ」
ヨシオは即答した。
「お前が来る必要はない」
「でも……」
通話が突然切れ、ヨシオは呆然とした。
電波障害か?それとも意図的に切った?
「柚希さんでしたか?」
紗月が小声で尋ねた。
ヨシオは黙ってカップ麺を二つ手に取った。
一つは自分の分。
もう一つは—
もし柚希が現れたら。
レジに向かうヨシオの後を紗月が無言でついてきた。
「君も買うのか?」
ヨシオは振り返った。
「いいえ」紗月は首を振った。
「ただ気になるので」
「何が?」




