35/91
## 零細生活者の生態 ### 第十八章 100円の奇跡③
「全てです」
紗月の眼差しが真剣だった。
「叔父さんと柚希さんの関係」
ヨシオはため息をついた。
若い世代に説明するのは難しい。
「複雑なんだ」
「そうですよね」
紗月の口調は妙に大人びていた。
「だから逃げたんですか?」
図星を突かれてヨシオは言葉に詰まった。
「君には関係ない」
寝床までの短い距離を二人で歩く間、沈黙が支配していた。
「あの」
紗月が突然口を開いた。
「柚希さんは悲しんでいます」
満月の声が沈んでいた。
「連日泣いてばかりで……」
「そうか......」
ヨシオは空を見上げた。
月は既に西の空に傾き始めている。
「それで?俺にどうしろと?」
「会ってあげてください」
紗月の目が潤んでいる。
「あの子があんなに感情を露わにするのは珍しいんです」
ヨシオは首を振った。
「無理だ。今の俺には会う資格がない」
「でも!」
紗月が食い下がる。
「柚希さんはきっと……」
「それより」
ヨシオは話題を変えた。
「腹減ってないか?」
「え?」
「せっかく買ったカップ麺だ」
ヨシオはカップを持ち上げた。
「一人で食うより二人の方が旨い」




