## 残飯と偽りの正体 ### 第三章 曝露された嘘
「叔父さんが警察官だったなんて冗談でしょう?」
柚希の声には嘲るような調子が混じっていた。
ヨシオは動きを止め、ゆっくりと振り返った。
その目には一瞬だけ鋭い光が宿ったように見えた。
「誰がそんなことを?」
「みんな言ってた。近所のおばさんたちとか……『あんな優秀な息子さんがいたのに』って」
ヨシオは苦笑した。
「ただの噂だよ。俺は普通の工場作業員だ。学校を出てそのまま現場に入ったんだ」
「でも……」
柚希は食い下がった。
「昔の写真を見たことあるわ。制服姿の叔父さんの写真」
「あれは地域の防犯パトロールボランティアだよ。町内の役員やってた時期があってね」
ヨシオは立ち上がり
地面についた膝の泥を払った。
「警官なんて柄じゃないさ」
柚希は不満そうに唇を尖らせた。
「じゃあ、あのバッジは?ママから聞いたわよ。本物の警察バッジを持ってるって」
その時だった。
突然風が吹き、ヨシオのズボンのポケットから何かが滑り落ちた。
柚希が拾い上げたのは小さな金属製のバッジだった。
警察のものではなかったが
「特別交通指導員」と刻印されている。
「これは……」
「去年まで交通整理のアルバイトをしてたんだ」
ヨシオは気まずそうに言った。
「お前が気にするほど立派なものじゃない」
「嘘つき……」
沈黙が落ちた。
夕暮れの歩道橋には二人以外に人影がない。
「でも……」
柚希の声が小さくなった。
「それでも、尊敬できます」
予想外の言葉にヨシオは驚いた表情を見せた。
「どんな仕事をしていても......」
柚希は続けた。
「私みたいに恵まれた環境にいる人が言うことじゃないけど……家族のために頑張ってきたんでしょ?」
「それは……」
ヨシオは言葉に詰まった。
家族。その単語が胸に刺さった。
「帰りましょう」
柚希は唐突に言った。
「こんなところにいたら冷えるわ」
彼女の態度は軟化していた。
ヨシオは戸惑いながらも、初めて姪の瞳をまともに見た。
そこには以前のような侮蔑ではなく、
複雑な感情が浮かんでいた。
「ありがとう」
思わず口をついた言葉に自分でも驚いた。
「何が?」




