時の果てで交差する影
**屋上ヘリポート**
「こんな……はずでは……」
花音が扇子を落とす。
眼下には警視庁特殊部隊のヘリコプターが旋回していた。
「あなたは終わりです」
真実の声に花音が振り返る。
「待ってください!」
紗月が割って入る。
「彼女は利用されただけです!」
「同情は無用よ」
花音が儚く笑う。
「でも感謝します。おかげで大切なことに気づけました」
---
**深夜の病室**
ヨシオの寝顔を見つめる柚希と凛太郎。
「ねぇ凛太郎」
姉が俯いたまま問いかける。
「私……これからどうしたらいいかな」
「決まってるだろ」
弟の言葉に迷いはない。
「誰も幸せにできない自分に囚われるより……目の前の幸せを守るべきだと思う」
兄妹の視線が交差する。
かつてない程穏やかな気持ちが二人を包み込んでいた。
---
**一年後 街角カフェテラス**
「こんにちは〜♪」
紗月の陽気な声が響く。
私服姿で傘を差した姿はどこか懐かしい印象を与える。
「調子良くなったみたいね!」
テーブルを囲むヨシオ・柚希・凛太郎が顔を上げた。
「お前……」
ヨシオが言葉を選ぶように口を開く。
「よく来てくれたな」
「まぁね♪」
笑顔の裏に複雑な感情が見え隠れする。
裁判沙汰になりそうな問題は全て片付いたとはいえ世間的にはタブー続きだった。
「一つ聞きたいことがあるんだけど」
柚希がコーヒーカップを置く。
「結局何が目的だったの?クローン作りとか……」
「単純に言えば」
紗月が指先でテーブルをなぞる。
「永遠の恋人探しよ」
「は?」
全員の顔から血の気が引く。
「安心して」
花音の幻影が脳裏に浮かぶのも無理はない。
「もう止めたわ。だって……」
視線がヨシオを捉える。
「本人の方がずっと魅力的だったんだもの♪」
静寂。そして一同が顔を見合わせた後—
**パチンッ!**
柚希が指を鳴らす。
「そういうことだったのね……」
「俺のことか?」
ヨシオの困惑顔に凛太郎が噴き出した。
「まだまだ修行不足だなぁ〜♪」
青春ドラマのような穏やかな時間が流れる中で一人だけ沈黙を守る人物がいた。
真実だった。
彼女の瞳に過った影に誰も気づかないまま季節は巡っていく——




