復活の兆し
### 三十秒後
**ガコンッ!**
ベッドに叩きつけられた紗月の背中から鈍い音が響く。
倒れた拍子に点滴スタンドが傾いた。
「くっ……」
悔しそうに床を殴るその様子に以前までの高慢さはない。
初めて見せる人間らしい弱さだ。
「紗月さん」
花音の声は哀れみと嗜虐心が混ざった奇妙な抑揚だった。
「諦めてください。あなたに勝ち目はありません」
### 手術室隣接ラボ
「どうなってんだこれ!?」
真実がタブレットを握りしめる。
花音の実験ログには衝撃的な記述があった。
>被験者Y.H.は先天性再生覚醒と選択
**午前四時 危機管理センター**
「外部警報が止まりません!」
オペレーターの報告に真実が舌打ちする。
病院敷地内の各所で暴動が発生していた。
「制圧班を……」
言葉が途切れる。
大型スクリーンに映し出されたのはヨシオの姿だった。
点滴針が床に散らばり裸足のまま廊下を彷徨う。
「なぜ動ける?」
医学的にはあり得ない回復速度だ。
---
**手術室前廊下**
花音の部下たちが円陣を組む中でヨシオは無言で壁に凭れていた。
「おとなしく……」
**ガシッ!**
紗月が部下の一人を羽交い締めにする。
「ヨシオさんに近づくな!」
「何をする気ですか!」
「全員射殺命令が出ています!」
---
**中央ロビー**
「花音様!緊急事態です!」
SP隊長が膝をつく。
「クローンプロジェクトが流出しました!」
「なんですって?」
花音の顔から血の気が引く。
「証拠隠滅を……」
**バタンッ!**
扉が開き駆け込んできたのは凛太郎だった。
「みんな見てください!」
タブレットを掲げる。
画面には各国メディアによる伯爵家非難記事が躍っていた。
「まさか……」
紗月が呆然と呟く。
裏で彼女がリークした証拠だ。
「どうやって?」
「簡単ですよ」
青年が得意げに微笑む。
「SNSで拡散したんです。匿名でね」
---
**裏庭臨時診療所**
「ヨシオ君!」
雅也が駆け寄る。
簡易ベッドの上で男は浅い呼吸を繰り返していた。
「無理はするな……」
**ピクッ**
瞼が震える。
焦点の合わない瞳が男を見つめる。
「雅……さん……?」
「ああ」
雅也の目尻から一筋の涙が零れた。
「お帰り」




