未知の治療
**ピーッ!**
心電図が正常域に入ったのを確認すると花音が優雅に一礼した。
「研究サンプルとして保存させていただきます」
「ふざけるな!」
扉が破られた勢いで紗月が乱入する。
拘束具を剥がした跡が生々しい。
「ヨシオさんは私たちの玩具よ!あんたみたいな外道に渡さない」
「面白いジョークね」
扇子を軽く叩く動作だけで室内温度が二度下がった錯覚に囚われる。
「所有権は遺伝子レベルで登録済みなのよ」
「何ですって?」
紗月の顔面から血の気が引く。
### 同刻 待機室
「遺伝子登録?」
雅也が眉をひそめる。
政治家としての直感が警告を鳴らしていた。
「詳しく説明してくれ」
「花音家が保有するバイオバンク技術です」
真実が暗号キーを解除しながら説明を続ける。
「一般人の同意なく遺伝データを取得し改竄可能なシステム……これが合法化されたら生物兵器の製造も可能です」
「つまり……」
凛太郎が青ざめた表情で呟く。
「ヨシオさんは実験動物扱いされてたってことか!?」
### 手術室
**ポチッ**
花音が謎のタブレットを操作するとヨシオの胸骨部分に青白い光が走った。DNA分子模型が立体投影されている。
「彼の遺伝子配列は非常に稀少なの。再生能力が高い特異体質でね」
「再生?」
教授の言葉尻を引き継ぐ紗月の瞳孔が開く。
「じゃあ何度殺しても生き返るってわけ!?」
「正確には自己治癒プロセスを加速できるわ」
得意げに解説する伯爵令嬢。しかしその唇が僅かに震えている。
「でも今回投与した薬剤は副作用があって……」
**バリィッ!**
金属の千切れる音に全員の視線が集中する。
拘束用ベルトから脱出した紗月が高速で接近してきた。
「教えてもらおうか?副作用ってのはどんなモンなのよ!?」
「待ちなさい!」
教授の制止を振り払い花音が反撃に出る。扇子が風を切る音が室内を支配する。




