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力の均衡
「怪我人など仕方あるまい」
雅也が腕を組んで宣言する。
部屋の空気が一段と重くなった。
「ヨシオ君は妻の姉の元夫なのだからな」
「でも……」柚希が抗議しようとするも父親の手が制した。
有無を言わせぬ動作だ。
「今の状態は」
威圧的な視線がヨシオを貫く。
「全て貴殿の努力不足ゆえのことだ」
断定口調に誰も反論できない。
「私は今年末で省庁の事務次官になることが内定している」
突如明かされたキャリアに三人が息を飲む。
国の中枢に近づくポジションだ。
「その時期に醜聞など以ての外だ」
低い声に政治家の本性が滲む。
「私たち家族に迷惑はかけないでくれよ」
最後通告のように付け加えられた言葉が刃物のように突き刺さる。
「……わかりました」
ヨシオが俯いたまま承諾した。
反論すれば更なる制裁を受けることは明白だった。
(やはりな)
心の奥底で確信する。
この男が実力主義者である限り弱者は排除される運命なのだ。




