食後の決意
**二十分後**
皿を下げながら柚希が突然思い出したように口を開いた。
「あ、そういえば叔父さん」
全員の視線が集まる。
彼女の口元にはまだフレンチトーストの甘い味が残っているようだ。
「紗月さんからのメッセージどうするつもり?」
核心を突かれたヨシオは咳払いをした。
紗月の件は棚上げしたままだったことに今更気づく。
「まだ考えてないんだ」
正直に告白すると柚希の目が細くなる。
怒っているわけではない。心配そうな眼差しだ。
「昨日のことまだ伝えられてないでしょう?」
責める口調ではなく諭すような優しさが込められている。
「うん……」
ヨシオは頭を掻いた。昨晩の紗月との約束破りを言い訳するのは容易ではない。
「私が代わりに説明しましょうか?」
「いやいやダメだ!」慌てて手を振る。
少女の善意とはいえ他人任せには出来ない案件だ。
凛太郎が不思議そうに割り込んできた。
「一体何があったんです?」
医学書を片手にコーヒーを淹れ直す仕草は妙に貫禄がある。
「暴力事件?警察沙汰?」
察しの良さに驚愕するヨシオ。確かに賢い子だが推理能力が異常だ。
「全部合ってるよ……」柚希が代わりに白状した。
「お巡りさんに捕まったり病院に行ったり散々だったの」
「なるほど」納得したように凛太郎が頷く。
「それで約束を破ったと」
「そういうことだ」肩を竦めるヨシオに少年はにやりと笑った。
「まずは謝罪ですね」至極まっとうな提言に誰も反論できない。
「誠心誠意伝えないと女性は許してくれませんよ」
「お前何歳だよ!」年長者のように語る少年に思わず突っ込む。
「十四歳ですけど恋愛心理研究もしてるんです」
堂々と説明する姿に姉弟共に脱帽するしかなかった。
「さて」柚希が気を取り直す。
「まずはケガを治さないとね」
「俺のために色々ありがとうな」
礼を述べると柚希の頬が僅かに染まった。
「当然よ家族なんだから」
素朴な愛情表現に胸が熱くなるヨシオ。
同時に責任感が込み上げてくる。
(絶対に報いなければ……)




