涙の膝枕
**タクシーの後部座席**
膝枕されたヨシオの耳元に柚希の嗚咽が届く。
「……うっ」
彼女が必死に堪えている。
しかし肩が小刻みに震えている。
「どうした?」
ヨシオが顔を傾けると……柚希の大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
頬を伝い落ちた雫がヨシオの額にぽとりと落ちる。
「こんなに……ボロボロになって」
涙声が車内に響く。
柚希の右手が伸びヨシオの頬に触れる。
乾いた垢と泥が指先に付着した。
洗っても落ちない頑固な汚れだ。
「ごめんな……汚くて」
自虐的な言葉に柚希が首を激しく横に振る。
「違う!私……悔しいの!」
その叫びに運転手がバックミラー越しに視線を送ってきた。
柚希は慌てて声量を落とす。
「叔父さんがこんな目に遭ってるのに……私何もできなくて」
彼女の親指がヨシオの皺深い目尻を撫でる。
かつては肌艶もあったであろう箇所は今や荒れ果てていた。
無精髭の生えた顎のあたりを触れる指先が震えている。
「汚れてなんか……ないわ」
柚希の呟きには決意のようなものが籠もっていた。
それは単なる慰めではなく確固たる信念に近いものだ
「この人は……私の大切な人だから」
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