許しの瞬間
「でもね……叔父さん」
柚希の声が震えた。
白い指が包帯を留めながら顔を伏せる。
「なぜこんな無茶をしたの?」
**ぽた……**
熱い水滴が膝に落ちた。
透明な筋が白い脚を伝っていく。
「連絡してくれれば助けに行ったのに……」
涙声が途切れ途切れに続いた。
普段は勝気な少女の頬が高潮し唇が歪んでいる。
ヨシオの意識が完全に回復した今になって堰を切った感情の奔流だ。
「……ごめん」
ヨシオは言葉を探すが見つからない。
「あんなことをしてしまって……君に合わす顔もないと思っていた」
言い終わらないうちに柚希が強く首を横に振った。
「違うわ!」
彼女の手がヨシオの額に触れる。
ヒヤリとした感触と共に彼女の体温が移った。
「私は……びっくりしただけ」
声を震わせながらも真剣な眼差しがヨシオを射抜く。
「行為そのものは……怖かったけど……」
**ゴクッ**
ヨシオの喉仏が上下する。
あの日の記憶—
公衆トイレで柚希を壁際に追い詰め欲望に溺れた浅ましい姿—が鮮烈によみがえった。
「それでも……助けてくれたのか?」
恐る恐る尋ねる老いた眼差しを柚希はじっと見据えた。
澄んだ瞳の奥に確信のようなものが宿っている。
「だって」
ゆっくりと息を整えながら少女が告白する。
「私が悲しい時に慰めてくれたのも叔父さんだったから」
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この告白には二重の意味があることをヨシオは知っている。
「柚希……」
涙で滲む視界の中で彼女の輪郭が霞んだ。
膝枕されたまま天を仰ぐと冬の薄雲が晴れかけていた。
歩道橋の影から抜けた陽光が少女の肩口を黄金色に縁取る。
「ありがとう」
心からの感謝と共に手を伸ばすと柚希の指が絡まった。
細くて長い指の節々には意外な強さがあり—
少女ながらにしっかりと生きた証拠が刻まれている。
「これからどうするの?」
柚希が現実的な疑問を投げかける。
脇腹の湿布は既に新しく張替えられ包帯も綺麗に巻かれていた。
「とりあえず……この傷が治るまでは安静にしないと」
老いた首筋に冷や汗が浮かぶ。
「そうだな……」
同意した瞬間少女の身体が硬直するのが伝わった。
不安げな表情で上目遣いをする。
「もし……良ければ」
ためらいがちな前置きの後に爆弾発言。
「私の家に来てくれない?」




