192/230
歩道橋の償い
「……」
沈黙の後、ヨシオが口を開く。
「柚希……この前は、本当にごめん」
**公衆トイレでの一件**
その言葉に柚希の手が止まる。
顔が見る見る紅潮していく。
視線が逸らされ指先が僅かに震えた。
「……もう終わったことよ」
低い声で呟きながら手際良く新しい包帯を巻きつける。
清潔な布地が肌に触れるたびに鈍い痛みが走る。
「でも……」
言いかけるヨシオを遮り柚希が毅然と言い放つ。
「今気にすることじゃないでしょ」
視線は包帯に注がれたままだったが頬の紅潮は引かない。
羞恥心と憤りが混在した複雑な表情だ。
「柚希、君に会いたかった……」
「私も叔父さんに会いたかった……」
そこで言葉が途切れ柚希の瞳が潤む。
短い肯定が二人の間に沈黙を生む。
先程までの野次馬は人垣を崩しこの時間帯には珍しい静寂が訪れていた。
「制服が汚れてしまったな」
ふと視線を落とすと柚希の膝に乗った部分に黒い染みが広がっていた。
濃紺の生地が斑に汚れている。
「構わないわ」
驚くほど平静に柚希が言った。
「血ぐらい洗えば落ちるもの」




