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歩道橋の奇蹟
「馬鹿だな……俺みたいなホームレスに構うなよ」
自嘲気味に言うと柚希の掌がやさしく頬を撫でる。
「叔父さんは……家族だもの」
その台詞が胸を刺す。
五年前に離婚した妻の面影が重なる。
同時に花音の言葉も脳裏を過った。
『彼は天然記念物だから守るべきよ』
「お前……いつから俺のこと見てた?」
突然の質問に柚希が赤面する。
「ずっと……昔からよ」
脇腹の冷感が意識を引き戻した。
目を開けると青い空と……
白い膝小僧が視界いっぱいに広がっている。
「動かないの」
柚希の声が優しく頭上で響く。
彼女の制服スカート越しに太腿の温もりが伝わってくる。
膝枕されているのだ。
「何してんだ……」
ヨシオが身じろぎすると柚希が慌てて濡れタオルを脇腹に押し当てた。
「安静にして!折れた骨がずれるわよ」
氷水で冷やされたハンカチが患部にぴったりと貼り付く。
腫れた肌に浸み渡る清涼感が快い。
「いつの間に……」
説明する口調は淡々としているが目尻には涙の痕跡が残っていた。
指先が器用に湿布を剥がし新しいものに貼り替えていく。
薬局のロゴ入りパッケージの新品だ。




