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歩道橋の記憶(続き)
頬に落ちてきた液体は微かに甘い香りがした。
涙だ。
「……無事でよかった……」
嗚咽混じりの声が降ってくる。
視界が焦点を取り戻す。
目の前に跪く少女の顔―
青紫の血管が浮き出た白皙の肌に涙が珠となって伝う。
「心配したんだから……」
だが声質が微妙に違う。
柚希の透き通るようなアルトではなく……
もう少し低く落ち着いた声色だ。
目尻の泣きぼくろが印象的だが左右逆になっている。
そして何より―
「君は……?」
問いかけた瞬間少女の指が唇を塞いだ。
「喋らないでください」
制止する掌には深いマニキュアが塗られていた。
深紅ではなく深い茶色。
柚希が施すクリアのネイルとは明らかに異なる。
さらに注意を惹くのは―制服だ。
襟元にエンブレムがない。
シンプルな無地ブレザーにプリーツスカート。
通っている女子高の指定服とは似て非なるデザインだった。
「薬を飲ませるので」
懐から取り出した錠剤を手渡される。
指先が触れ合い電流が走る感覚。
これは柚希の繊細な手つきではなく……
もっと大人びた繊細さだ。
手首には銀色のバングルが鈍く光っていた。
「花……音?」




