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八百円の価値
駅地下とプラットホームを三往復ほどして
結局ゲットしたのは漫画の週刊誌4冊、芸能週刊誌3冊、文芸誌1冊の計8冊だ。
上出来だ。
全て本日発売の比較的きれいな本なので一冊百円で売ろうと決める。
早速駅前の脇道に入り、路上に古新聞紙を引きその上に雑誌を並べる。
段ボール片に1冊百円と書く。
結果は、通勤途上のサラリーマンに30分ほどで即完売してしまった。
なるほどこれはホームレス達が商売にしているのがよくわかるなと感心する。
「ありがとうございました」
雑誌を受け取った会社員風の男が会釈ひとつせず立ち去る。
最後の一冊が売れた瞬間だった。
「お疲れさま」
見知らぬ老婆がニッと笑いながら通り過ぎる。
どうやらこの区域で路上販売を行うホームレス同士の暗黙の了解があるらしい。
ヨシオはポケットに残った八百円を握りしめた。
硬貨の冷たさが確かな成果を伝えてくる。
(今日は昼飯にありつけるぞ)
工場勤務時代に比べれば雀の涙ほどの金額だ。
しかし今朝の空腹感と比較すると天国と地獄ほどの差がある。
「おい兄ちゃん」
声に振り向くと顔見知りの老人が煙草を燻らせていた。




