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温かいカフェオレ
「いらっしゃいませ〜」
若いウェイトレスの朗らかな挨拶が店内に響く。
午前八時過ぎ。
通勤客で賑わう駅前カフェはコーヒーの香りで満たされていた。
カウンター席に案内されたヨシオは無料引換券を差し出す。
「こちらですね。少々お待ちください」
手際よく抽出されたカフェオレが運ばれてくる。
湯気が顔を暖め指先の震えが緩和する感覚があった。
(贅沢だ……)
三年ぶりに感じるまともな飲み物の味。
糖分が脳に沁みて行く。
ふとテーブル上に置かれた文庫本に気が付く。
挟まれた付箋の頁を捲った。
『あなたはあなたのままで良いのです』
ヒロインが恋人に語る台詞が目に飛び込む。
ヨシオは自分の惨めさを痛感した。
柚希を傷つけ花音に翻弄される今の自分が正当化されるはずもない。
「お客様?具合が悪いですか?」
ウェイトレスの声で我に返る。
周りの客たちが怪訝な視線を投げていた。
ホームレスらしき中年男が文庫本を読み耽る姿は明らかに場違いだ。
(そろそろ出たほうがいいか)
腰を浮かせた瞬間—
「ここいいですか?」
聞き覚えのある声。




